昭和の終わりに起きた未解決事件の記憶は、中高年以上の方しかお持ちではないでしょう。
「グリコ・森永事件」(1984年/昭和59年)と「朝日新聞阪神支局襲撃事件」(1987年/昭和62年)の解決を導けなかったことを、兵庫県警の捜査一課長の立場だった山下征士さんが、自らの悔恨を綴った一冊『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』を読みました。
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ノンキャリアの叩き上げ刑事の回顧録
官僚組織だとキャリアとノンキャリアという区別が明確に存在していると言われています。
警察組織でノンキャリアの方が辿り着けるのは、警察署長、捜査一課長といった役職までらしいです。
今回、山下さんが現場の一線で、挑んだ未解決事件をどう振り返り、何を考えているのかを記録として残している一冊でした。(あくまで警察内部資料というよりは、ご本人の記憶と記録によるものでしょう)
警察庁広域重要指定事件が生まれた背景には、組織の壁の問題がある!
2つの事件は、都道府県レベルの警察組織を超えた、広域で、かつ、需要と指定された事件の中でも、未解決なまま時効を迎えたという点が最大の特徴です。
警察組織は、組織の壁(各レベルで発生)が事件解決の妨げになるという判断で、お互いが協力して事件解決に挑むとする考え方。
実は、今でも、会社組織、地域組織などでも、この組織の壁は、根強い問題になっています。
それぞれの組織の縛りが強ければ強いほど、横の連携は取らず、縦の硬い結束が重視されてきました。
今でこそ、横の連携、他分野とのコラボなどは増えているものの、以前は、この縄張り意識はお互いのプライド(意地)をかけて守るべきものと捉えられていました。
縄張り意識は、組織の結束が強ければ強いほど抜けきれない
かつての組織は、上下関係のきっちりした厳しい掟を持つことにより、強い結束を持っていました。
組織のルールは絶対で裏切り者、反対者は許さない(敵と見なす)という発想は、明らかに交戦的な姿勢が背景に感じます。
もちろん、組織の仲間への温情、厚遇は当然としても、組織外へは冷徹で、連携や協力などは得にくい時代があったのです。
組織の固さとお互いが切磋琢磨することにより、成長してきた分野があるのは事実です。
一方で、無駄ないがみ合いにより、遠回りしてしまい残念な結果になったのが、今回のような未解決事件の顛末のような気がします。
たら、ればの仮定論として、もし、協力体制を早期からしっかり取れていれば、解決できかもしれないと考えます。
あの2つの事件とはいったい何だったのか?
今回、世間を騒がせた、2つの事件とは何だったのか、警察関係者の事件への取り組みの振り返りがまとめられています。
・グリコ・森永事件
グリコ・森永事件(グリコ・もりながじけん)とは、1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に、日本の阪神間(大阪府・兵庫県)を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。
警察庁広域重要指定114号事件。犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、かい人21面相事件などとも呼ばれる。
2000年(平成12年)2月13日に愛知青酸入り菓子ばら撒き事件の殺人未遂罪が時効を迎え、すべての事件の公訴時効が成立してこの事件は完全犯罪となり、警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。(Wikipedia「グリコ・森永事件」より引用)
当時、小学生だった私は、この事件の記憶が鮮明に残っています。
町の駄菓子屋でも、スーパーでも、お菓子を買うことが怖くなり、親からも禁止されたことだけでなく、食べ物に毒を入れるという行為が信じられなかったのです。
報道での「かい人21面相」と名乗った犯人の存在。
こんな悪いことをする人物はきっと捕まって罰せられると思っていた私からすると、未解決のまま、風化していくのが不思議でした。
なぜ、あんな事件を起こしたのか。何をしたかったのか。
愉快犯というには、やり方が危なっかしくて、捕まえられない巧妙さ。
今の時代なら、科学的捜査や、SNSの影響で犯人につながる情報量は違っていたかもしれませんが、当時は、山下さん以下の捜査関係者が必死に追った犯人を捕まえきれず、時効が成立してしまった事件。
以前、小栗旬さん主演で、この事件をモチーフに映画化されていた作品を見ました。
組織の問題が原因なのか、犯人側の策略が上だったのかわかりませんが、この事件の謎は解けないままで終わっています。
・朝日新聞阪神支局襲撃事件
新聞社の支局が銃で襲われるという恐ろしい事件も鮮烈でした。
この事件は、赤報隊事件とも言われています。
赤報隊事件(せきほうたいじけん)は、1987年(昭和62年)から1990年(平成2年)にかけて「赤報隊」を名乗る犯人が起こしたテロ事件である。警察庁広域重要指定番号から、「広域重要指定116号事件」とも呼ばれた。
記者が政治的テロによって殺害された日本国内唯一の事例とされるが[1]、2003年(平成15年)に全ての事件が公訴時効を迎え、2022年現在に至るまで犯人の特定がされていない未解決事件となっている。(Wikipedia「赤報隊事件」より引用)
新聞記者が、支局内で小尻知博記者(享年29)が銃撃で殺されるという事件の恐怖。
ゴールデンウィークだけに、支局に人が少なかったり、現在ほど、セキュリティが厳しくなかった時代だとはいえ、突然、襲われた命を失うという驚愕の事件。
犯人側が名乗った「赤報隊」という名称や政治家への脅迫状なども含めて、騒がれたものの、ある時点で、ピタッと事件は止まり、捜査を続けても時効を迎えるという展開。
無差別的なテロ行為に目的はあったのか
この2つの事件の共通点は、関西(兵庫や大阪など)で発生して、世間を騒がせた、無差別テロ的な行為だったという事実です。
つまり、特定の誰かを葬り去ることを目的にするのではなく、不特定の誰かを襲うということにより、恐怖を与えたという点は、冷静に考えてみても驚きです。
金銭目的にせよ、政治的目的にせよ、何らかの目的を果たすために、行った事件としては、どちらも最終的には中途半端です。
犯人側に何か問題が発生したのか、闇に葬られたのかは不明ですが、どちらも、未解決事件として歴史に名を残したことは事実です。
二本の棘を山下さんは死ぬまで負い続けるのか
世間を騒がせた大事件をリードした、県警の捜査一課長を勤めていた山下さんにとっては、時効など関係なく、犯人を捕まえて解決したい気持ちがあるのが伝わってきます。
「二本の棘」というタイトル通り、人生の中で引っ掛かり続ける棘が、これほど大きなものだと一生消えることはないでしょう。
どうして、自分が、このタイミングで、その立場に身を置いたのか。
どうすれば事件が解決できたのか。
この思いが全体から伝わってくる一冊でした。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
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