「待っているだけじゃ、救えない命がある。」【映画】「劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室」(2023年公開)必ず、守るという強いヒーローが命を救う

医療ドラマに、危機的な状況を救うヒーローを掛け算したら、どんな作品になるのだろう。

おそらく、「TOKYO MER」という作品では、医療従事者へのリスペクトを高めつつも、命を救うためには、組織や役割なども関係なく突っ走ることが大切だと思い知らされる。

彼らのスピード感と緊張感に溢れるシーンの連続に、スクリーンでも心を奪われてしまう。

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鈴木亮平の凄まじい鍛錬と共演者、スタッフとの関係が生み出した奇跡の作品

「TOKYO MER 走る緊急救命室」は、TBSの日曜劇場で放映されたドラマの段階で、大人気でした。

医療ドラマは数多くあれど、手術のテクニックを見せつけることはあっても、実際に、役者がどこまで手を動かしているのか、定かではないものが多いのではないでしょうか。

今回、主演の喜多見幸太を演じる、鈴木亮平さんの凄まじい鍛錬(トレーニング)が、他の主演陣にも波及したことで、緊迫感のあるシーンが続出することになります。

鈴木亮平さんは、人工皮膚を縫うことを何度も繰り返し、難しい医療専門用語も駆使しながら、ものすごいスピード感で、MERの世界観を伝えていますが、その影響で、周りの役者やスタッフにも波及したことで、フィクションなのにリアルティを感じられるのです。

待っているだけじゃ、救えない命がある。

ドラマ「TOKYO MER 走る緊急救命室」でも、当初から何度も出てきた決めゼリフ

待っているだけじゃ、救えない命がある。

この一言があって、医療スタッフが自らの命を危険に晒しても命を救おうという行動を続けます。

映画化され、劇場版になっても、コンセプトは変わらず、「YOKOHAMA MER」という厚労省直轄の組織との対立も鮮明に描かれていました。

救命医療が描かれるドラマは多かったもののの、現地に医師が出向くのは、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」以外は、医療機関で運ばれてくる患者を待つだけでした。

対比されがちな「コード・ブルー」は、ヘリコプターで現場に出向いていくものの、持ち込める医療資材・機器には限りがあり、最低限の処置しかできません。

緊急救命の手術が行える移動車「TO1」(横浜の場合、「YO1」)があることで、現地で緊急性の高い処置が行えるわけです。

彼らは、現場で、トリアージで患者の状態を判断し、赤タグを貼った迅速な処置が必要な対象者の中でも、危険度が高い方を運び込み、「TO1」のなかで、緊急オペをこなします。

ドラマ版も、劇場版も、このスピード感ある動きに、見ている側は、ハラハラドキドキしながら引き込まれていきます。

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架空ではない横浜ランドマークタワーを現場にしたから

エンターテイメントである以上、架空の施設での災害で話を作り込むことが可能なのに、今回は、地上70階の横浜ランドマークタワーを舞台にした大火災という設定。

誰もが見たことがあったり、足を運んだことがある場所だけに、あの施設で、もし大火災が発生したら大変なことになるというのは説得力が出ます。

もちろん、大半のシーンは、セットやCG(VFX)などの効果が背景にあるのは分かっていても、リアルに見せられる場面が多くて、手に汗を握ります。

193名の命を救うために、MERのメンバーやレスキュー隊などがどんな動きをしようとアプローチしたのかが伝わり、簡単に解決しない、二転三転の危機的状況を、仲間が救い合うシーンには涙が出てしまいます。

たった一人の力だけじゃ、救えない命がある。

私は、このMERの中に込められた、大事なもう一つのメッセージだと受け止めました。

対立構造は、組織間では避けられない

今までも、MERとレスキュー、MERと警察など対立する要素はありましたが、今回は、東京VS横浜(神奈川)という構図も含まれています。

石田ゆり子演じる、赤塚東京都知事の強いリーダーシップも見事ですが、彼女を自由にさせようとしない、政府側の関係者(厚労省や大臣など)のパフォーマンス的な意図も感じます。

当然、人と人、組織と組織の間で対立構造は生まれます。

お互いの役割と責任などの元で、棲み分けが必要なのは事実。

ただ、命を救うという1点だけに思いを抱く、喜多見医師の思いと人並外れた行動力と判断力があってこそ、奇跡のMERが存在しています。

だからこそ、紆余曲折があっても、最後は誰もが彼らに協力するという展開に流れていくのです。

危険な場所で自らの命を晒す行為は美徳とはいえない

賀来賢人演じる、音羽尚という医系技官(医師免許を持った官僚)が、冷静な目で、MERを全国に波及させる野望を持っています。

一方で、喜多見の危険すぎる現場へ飛び込む姿勢には、医療スタッフの命が危険にさらされるという点でブレーキを踏むべきだという冷静さが光っています。

闇雲に、危険な現場に医師が突入すれば、自らの命を失うリスクが高まるばかりです。

判断を少しでも誤れば、二次災害的な状況を生むことぐらい、過去の災害現場の経験からして、誰もが察することができる話。

MERの組織に頼らなくても済む安全な国、環境は作れないのか

感動した、泣いたという話が多い、大ヒット作の映画「劇場版 TOKYO MER  走る緊急救命室」ですが、現実に、このような医師や組織が求められるのか、というとYESとは言えません。

MERが現場に出向く頻度が少ないということは、安全な国や環境であるということ。

事故や災害のリスクを減らし、全ての人にとって安心できる状況で医療行為を受けるのがベストです。

一方で、一分一秒を争う場面であれば、AEDや人工呼吸などの処理を誰もが、臨機応変に対応することも必要だということも忘れてはいけません。

MERを望むのではなく、MERがなくても暮らせる国や社会になり、一人一人が健康で怪我なく、過ごせることを最優先にする気持ちも育ってほしいと思います。

だからこそ、一人でも多くの方に、「劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室」を見て、何かを感じて、自らがどのような行動を取るべきなのか、命の価値というものについて再認識してもらえたら、興行成績以上に意味があると感じます。

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安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
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