【映画】「室井慎次 生き続ける者」(2024年公開)あの終わり方で良かったのだろうか

踊る大捜査線の名物キャラクターといえば、室井慎次というのは納得していただけるでしょう。2024年秋に2本の映画が作られて、室井慎次の人生を語られる作品が公開されました。

賛否両論ありますが、劇場で、最後の室井慎次に会ってきました。

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なぜ、このタイミングで、シリーズを復活させたのか?!

2012年、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」を持って、人気シリーズは完結したと誰もが思ったのではないだろうか。

テレビドラマから始まり、映画化というパッケージを作り上げ、作品の価値の賛否はあるものの、興行成績の歴代1位として輝く「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年公開)を世に出してムーブメントを作った映画。

邦画がオワコン的なオーラが漂う中、刑事ドラマの常識を取っ払って、作り込み、お笑い的なノリも大事にした人気作だったことを覚えています。

では、なぜ、2024年にシリーズのスピンオフ的な作品を世に出す必要があったのでしょうか。

日常生活の中で、室井慎次が、今、何をしているか、気にしている人はどれぐらいいるのか、と考えると、作品の制作意図については、首を傾げたくなります。

室井慎次って、自分の信念を曲げないまま、人生を終えたのだろうか?

1964年生まれの元警察庁のキャリア官僚だった、室井慎次が、警察組織の改革を目指していたものの、夢破れて、出身地である、秋田に戻って、犯罪被害者・加害者の子どもの里親として静かに暮らす。

ある意味、人生の転換として何を選択するか、という意味で、一つの道として納得はできます。

組織の上まで行き、自分の目指す正義を愚直に目指した男が、到達できずに挫折。

それだけに、静かな田舎町で暮らす姿は、バリバリのキャリアのイメージとは異なっているので、人は変わらざるえない生き物だと感じる設定になっていました。

彼は信念を曲げることなく、ただ、叶わない理想に対して、諦めて、晩年を過ごそうとしていたのに、事件に巻き込まれていく。

彼がいなくなれば、すべての問題が解決する魔法には違和感がある

2作連続となるため、前作の映画「室井慎次 敗れざる者」の伏線を回収すべき、展開が、この作品には求められています。

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一人の市民となった、室井慎次が事件を捜査したり、解決するという展開にならないことは、作り手の思いを感じます。

彼がなぜ、里親となって田舎で暮らしたのか。

よそ者である彼が、地元で嫌われるような存在でいることを受け止めていたのはなぜか。

現役時代、傷つけた被害者・加害者の周辺の償い的な気持ちだったのは理解できます。

ただ、この物語を、どのようなエンディングで仕上げるべきだったのか、ラストに向けた強引な展開には違和感しかありません。

まるで、魔法をかけたように、彼が何もかもうまくまとめてしまうという設定には無理があります。

そして、エンドロールの曲が、どう考えても、踊るシリーズではなく、「北の国」からっぽいと言われる所以ではないでしょうか。

官僚も一市民として生きる晩年があっても悪くない!天下りしない道

室井慎次が普通のエリート官僚であったなら、どこかに天下りをした人生を歩んでいたことでしょう。

もちろん、彼の信念として、そのような晩年は受け入れるはずもなく、自分の余生を何にかけあるべきか、考えた結果、この映画の設定につながったのは納得できます。

考えてみれば、誰もが天下りをして、楽ちんでウハウハな現役延長時間を過ごすだけが幸せとは限りません。

だって、もはや現役官僚のピークは終えたのですから。

室井慎次だって、それなりの退職金を手に入れて、無茶をしなければ静かに暮らせるだけの資産的余裕はあったと推察します。

こういう官僚の晩年があってもいいのに、と感じた作品であるのは事実です。

踊るシリーズではなく、室井慎次の晩年の物語と受け止めよう!

事件が起きたようで、解決したようで、過去に縛られた無理矢理な設定すぎるじゃないか、といったような批判はあります。

でも、踊るシリーズそのものが、凶悪事件を追うよりも、事件の大きさを気にせず、目の前の困った人を助ける、交番のお巡りさんがはっちゃける、という前提であったならば、事件よりも組織ドラマだったと思います。

それだけに、今回の室井慎次の2作品は、彼の晩年を語る、終わらせるための物語だったと思えば、腹落とします。

大事なのは、この内容、レベルならば、映画にすることなく、テレビドラマで良かったのではないか、という点ですが、これは、別の意図があったのだろう、とだけ推測しておきます。

映画の観客の満足よりも、作り手側の満足が優先されたような気がして、この点は、残念でなりませんが。

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安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。