『女帝 小池百合子』を読んで、虚偽を重ねてキャリア構築を続けた人物は孤独だと感じた

石井妙子(著)『女帝 小池百合子』は、第52回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作品です。

2020年当時は、コロナ禍でもあり、話題のノンフィクションであったもののスルーをしていました。

最近、また、彼女の元側近たちが告発を始めた様子の原点として、この本は読んでおきたいと思い、手に取って読んでみました。

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ノンフィクション作家・石井妙子さんが『女帝 小池百合子』を書いた思い

ノンフィクション作家の石井妙子さんが『女帝 小池百合子』を書いた思いを本書の中で、下記のメッセージで受け止めました。

ノンフィクション作家は、常に二つの罪を背負うという。  ひとつは書くことの罪である。もうひとつは書かぬことの罪である。後者の罪をより重く考え、私は本書を執筆した。

書かぬことの罪を見捨てられないというスタンス・熱量がこのノンフィクションには溢れていました。

一人の女性の経歴を細かく追い続ける!カイロで共に暮らした北原百代さんの声

2020年の単行本の際には、仮名だった北原百代さんが実名を出して、文庫版の中でカイロでの小池百合子さんの生活を語っています。

もちろん、常に一緒にいなかったとはいえ、一緒に暮らしていたという、ルームメイトとして北原さんがどう見ていたのか、という点は、当時の日記などの形で残されていたようです。

エジプトに行って学ぼうという日本人が少ないのは、アラビア語、特に文語の難しさもあって、容易ではない世界に飛び込む女性というのはレアな存在だったのは、二人とも一緒だと思います。

隠しても過ごせるのに、なぜ、北原さんが石井妙子さんの取材に応じで、過去を暴露するようなことをしたのか。

本書を読めばわかりますが、明らかに、若かりし頃の小池百合子さんの姿を側で見ていた人物であり、彼女が学業に身を入れてなかったことを語れる唯一の証人だから、説得力があるのです。

北原さんが嘘をついてまで、語る必要なんてどこにもないですから。

公職選挙法の虚偽事項公表罪と彼女の経歴構築の間に

学歴が卒業でないとしても(中退・出身という扱い)、その後、キャスターや政治家に転じて活躍してきたのだから、過去をほじくり返すのは良くない、という主張をする方がいます。

おそらく法律を知らないがために、同情論で寄り添っているのでしょう。

公職選挙法:第235条 虚偽事項の公表罪

今回、小池百合子さん(東京都知事)が、経歴詐称をしているのであれば、公職選挙法に触れると言われているのは、この第235条 虚偽事項の公表罪です。
当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁又は三十万円以下の罰金に処する。

あんてる
選挙に立候補する際に経歴の詐称はいけません!というのはわかるけど、結構、罪は軽いんじゃないの?!

確かに、法律の罰則としては軽微なものかもしれませんが、彼女は、自らをアピールするために、カイロ大学主席卒業などと訴えてきました。

小池百合子さんは、自分の武器として、カイロ大学卒業、中東に詳しい女性というバックボーンでメディアの仕事について、その知名度を活かして、政治家になったわけですから、自分のキャリアを出発点から嘘をついてしまっているとしたら、構築されたキャリアそのものが虚像と言われても仕方ないのだと思います。

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虚像を演じないと生きられないとしたら切ない

世の中には、嘘つき、詐欺師など、事実とは違うものを前提に自分を語り、収入を得たり、被害を与える人がいるのは事実です。

もちろん、誰だって、多少の嘘やオーバーな表現をすることぐらいはあるでしょう。

「うそつきは泥棒の始まり」ということわざがあります。
平気でうそをつくようになると、盗みも平気するようになるという意味なのはご存知かと思います。

では、『女帝 小池百合子』を読んでいて、彼女の経歴詐称が、何を盗んだと言えるのか?と考えてみると、我々の税金を使い、己が目立つアピールばかりを続けて、政治としてのポリシーを感じないだけじゃないか、と指摘をされるかもしれません。

私たちの税金を自分の報酬とアピールに使ってきたとしたら、盗みと同様とも言えるのではないでしょうか。

誰に擦り寄って、という政党の渡り鳥の批判はありますが、ある意味、天才的な嗅覚で成り上がってきたことを否定するつもりはありません。(世の中に、そんな無節操な人はいくらでもいるし、自己保身を考えることは、生存本能みたいなものだと考えるので)

ただ、虚像を演じないと生きられない人間だとしたら、切ないと感じるまでですし、その彼女を選挙で選んだのは国民なので、共犯的な関係性があるとも言えるので、一方的に断罪するのは間違いでしょう。

人生のスタート地点が大変だとしても、のしあがるために嘘で塗り固めるのは良くない

女帝 小池百合子』は、石井妙子さんが、小池百合子さんの周辺の方々に丹念に取材を続けて書き上げたノンフィクション作品です。

彼女の取材に応じた人に、全く嘘がないのか、と言われれば保証はできません。

ただ、一人の人物のある部分を伝えるために、第三者が大幅な嘘をつくメリットというものは、普通は少ないものです。

むしろ、真実を語ることで身の危険を感じるとしたら、沈黙を守ればいいわけですから。

小池百合子さん自身が、『女帝 小池百合子』を虚偽の著作物だと思うのであれば、名誉毀損で訴えるという選択肢だってあるのです。

彼女の生い立ち、家族など諸々を考えると不幸な側面があるのは理解できます。

だからと言って、自らがのしあがる為に、嘘で塗り固めるというのは良くないことは、誰もが理解できる話です。

元側近と呼ばれる人まで反旗を翻す姿を見ると、彼女は孤独(孤高とは言いにくい)な存在なのだろうと勝手に想像しています。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。