終戦記念日に、ノンフィクション『日本のいちばん長い日』を語る

終戦記念日を語る当時を知る世代も、すっかり少なくなりました。

75年以上の時を経て、当時と同じ感覚で考えようとすることに無理があるのだと思います。

だからこそ、半藤一利のノンフィクション『日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日』は読んでおく価値のある一冊なのです。

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終戦を受け入れるために必要だった判断と登場人物たち

昭和天皇の玉音放送がラジオで流されたのは、1945年(昭和20年)8月15日正午です。

その過程において、国家の中枢である内閣や軍部の上層部が、どんな思いで、何をしようとしていたのか。

敗戦という結果を受け入れるために、苦しみながらも、未来の世代に日本を残そうとした鈴木総理、徹底抗戦をしようとした青年将校たち。

日本という国のことを思っていた熱い思いは同じでも、求めるものは違っていました。

幕引きをする阿南惟幾陸軍大臣の思いの深さと人柄・人格の素晴らしさ

海外ドラマ「24」のように1時間ごとに時間経過されていく、『日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日』には、様々な立場の人間の動きが入り乱れていきます。

鈴木貫太郎内閣の陸軍大臣として、幕引きをしなければならない立場でありながらも、陸軍という部隊のトップでもある人物、阿南惟幾(あなんこれちか)氏。

青年将校が、ギリギリまで抵抗して、クーデターを起こしそうな勢いも激しく、合意を得られずに、近衛師団の森中将(第一師団長)を殺害するという暴挙まで行ってしまう。

天皇陛下の玉音放送の録音盤を隠した宮内庁の侍従関係者と、日本放送協会の関係者たち。

そして、これらの事情を全く知らない、当時の日本国民たち。

ここまで丁寧に書き上げるには、関係者への取材を行っていた、半藤一利さんの覚悟と力量が全面に溢れています。

特に、阿南惟幾陸軍大臣の本意を知るために、できるだけ詳しく、描写を続けて自決までの時は、目の前に映像が見えるような気がしました。

阿南氏の人柄・人格の素晴らしさがあったからこそ、幕引きをしなければいけない難局の陸軍大臣を全うできたのだと理解できました。

国体護持だけには最後までこだわったのは

終戦のためには、ポツダム宣言を受諾せざる得ない状況で、無条件降伏が大前提。

それでも、政府関係者、東郷茂徳外務大臣などを筆頭に、阿南陸軍大臣も「国体護持」だけは必死に守ろうとしていました。

「国体護持」とは天皇制擁護・堅持するということを意味し、東京裁判までの戦後処理を含めて、死守しようとしていました。

昭和天皇は、「国体護持」は大丈夫という信念をお持ちだったようですが、やはり、終戦に当たり、この部分だけは最後の最後まで守りたいという思いが強かった人々が国家の中枢に多くいたという証です。

世界的な戦争で、敗戦を経験していない日本は、この1点だけは、どうしても守り抜きたいと考えていたものの、約束されない状態での終戦(ポツダム宣言受諾)に向かっていたため、強い不安を抱えていたものと推察できます。

一方で、毎日のように空襲で全国各地の街を焼かれ、原子爆弾を広島、長崎に落とされた状態では、1億玉砕の覚悟で戦い続けていたら、日本という国が世界から消えていたのかもしれません。

この1冊の印税を半藤氏は受け取らず(映画化権は取得)

この『日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日』を書いた、半藤一利さんは、原作時点で、原稿料として印税を一切もらっていないのです。

作品の編集的役割を果たした、大宅壮一氏に5万円が支払われただけとのこと。

ただ、映画化した場合の権利だけは取得していたそうで、単行本、文庫本で20万部ずつ売れてこともあり、1967年映画化(東宝)となりました。

半藤さんは、相当なエネルギーと時間をかけて執筆した作品に対する印税を断るという行為をした時点で、商業主義(本が売れる・売れない)という軸で、この作品を作らずに、史実として世の中に残しておかなければならないという使命感があったのではないでしょうか。

映画化が確実という自信があったのかもしれませんが。(考えにくい話ですが)

戦後20年以上を経た時点で、調べられる限りを調べて、真実を明らかに世間に伝えようとした時点で、主義主張が激しい時代に、一石を投じたことだけは間違いないと想像します。

映画はリメイクされた、決定版も出された本だからこそ

映画作品として、「日本のいちばん長い日」はリメイクされ、本木雅弘さんが昭和天皇を演じることを固辞していたのを、義母である樹木希林さんが説得したという有名な話を思い出しました。

書籍としても決定版を文庫から出されて、語り継ぐべき、ノンフィクション作品として価値を後世に伝えています。

時間の経過とともに、日本人の思考も大きく変わり、当時の時代背景や彼らの心がわからなくなってきている人が増えているのは致し方ありません。

善悪や主義主張の立場論ではなく、歴史上、この1日が存在していて、関わった人々が必死だったからこそ、戦後日本がスタートして、繁栄を生み出したのだという点は、語り継がなければいけないと肝に銘じておきます。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。