【レビュー】『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと 』尾木直樹

日本の教育の課題を知る

いま、社会で求められている人材は、豊かな発想力を持ち、思考力に長け、自己表現力に優れていて、なおかつ他者と恊働できる人です。

この一言を読みながら、今、求められる人材は、どんな教育のバックボーンを持つことが必要なのか考え始めました。

『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと 
尾木直樹

尾木ママの新書本ならば、軽く読めると想像した自分が甘かったことに反省させられています。

日本の教育が世界から遅れている現実。世界の教育ランキングでは、大学の順位も落ち、読解力、計算、テクノロジーなども落ち込み始めていた日本の現状に驚きました。

個人的には、「ゆとり教育」が、さらに悪影響を及ぼしたと考えていたのですが、尾木ママは、その世間一般的な考え方も否定します。

「ゆとり」の本質は、「授業時間数削減」や「学習内容削減」にあったのではないということをしっかり押さえておかなければなりません。その柱となっていたのは、知識の“量”を増やす教育ではなく、知識の“活用力”をつける教育への転換でした。そして、2020年ドから導入される学習指導要領でも、その点においては変わらず、「ゆとり教育」の精神を継承して欲しいと期待しています。

「ゆとり教育」は、世界標準を目指しており、知識の詰め込みから脱却しようとしていた姿を語ります。

OECDが1999年から2002年にかけて行った、人々がこれから社会に適合していくために必要とされる能を研究するプロジェクト「能力の定義と選択」(Deseco=Definition and Selection of Competencies)の研究成果として打ち出された新しい能力概念が、「キー・コンピテンシー」とされています。

①相互作用的に道具を用いる
②異質な集団で交流する
③自立的に活動する

確かに、日本の目指してきた方向はグローバルな基準に適合していたものの、早急に結果が出せていない点で、方針転換をしてしまいました。

今までの競争による暗記中心教育と異なる為、評価をつけることも、即効性も出てきません。

世界各国と日本を比較した場合、教育費無償化や給付型奨学金などの金銭面の問題まで広がりを魅せる議論を尾木ママは提示しています。

私費で教育投資を行うと格差は広がるばかりであり、人生を決めるのは世帯収入だけの影響がポイントになるとしたら、子供たちの未来は、彼ら自身の力では何も変えられないという厳しいものになる点は、配慮しなければいけない課題です。

教員・教師、学校側の問題について

教員・教師に心の病が増えているという情報は耳にしていました。その背景は、成果主義であったり、多忙さにより、教育すべき子供と向き合うための時間が不足しているという現実に、悲しい気持ちになりました。

もちろん、教育は、社会で担うべきものであり、個人の教師の資質だけで全てを左右するのではなく、学校や教育委員会の力は必要だというのは理解できます。

ただ、明らかにオーバーワークになっている現実を踏まえて、どこまでが学校でやるべき内容なのか、過剰すぎることを減らすということで、教える側に「ゆとり」を与えていない現実に、昨今の教育現場で起きている問題は起因しているような気がしてなりません。

親も、地域も含めて、教育現場を支援していくのが必要であり、監視・管理するというアプローチになると、対立構造を生むだけの関係になるのではないでしょうか。

私の友人に教員として働いている立場から、本音を聞いたことがあります。過度にプレッシャーを与えられており、時間的高速や業務量が多い印象が拭えませんでした。このままでは、子供も教員も壊れてしまうというのも想像できるし、その土台には家庭の問題も潜んでいるというのは、見過ごせない事実だと頭にインプットしたことを思い出します。

【まとめ】本のポイント!

・子供の教育には、長い時間が必要であるというスタンスを忘れないこと

・未来を担う世代の子供たちは、国際的にも活躍できる人材に育てるために他国のやり方を学んで取り入れること

・過度な競争主義から卒業すること。なんでもランキングをつける、数字化することだけが人を幸せにするわけではない

・子供が主役であるという、当たり前の視点を持つこと

・教育現場では、安全・安心と命を最優先にする基準を保つこと

<尾木直樹さんの本>

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。