女子高生に人気って響きは魔法のフレーズ!明治大学の変化について考える一冊
本のテーマは大切だけれども、タイトルと表紙の印象は重要です。
今回、ブックライターの上阪徹さんが書いた『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?
世間のトレンドは、女子高生が作るようになった印象が定着して長い時間が過ぎましたが、大学受験という彼女たちに直結する内容で切り込み、掘り下げられていた点は、この1冊の素晴らしさにも繋がっていました。
あの明治大学にブランドチェンジが生まれたのはなぜか?
日本の大学のランキングは偏差値とイメージ、人気が左右するものです。
東大を筆頭にした頭の良さと、就職先のグレードの高さは連動してきました。
その中、私立の雄は、早稲田大学、慶応大学のトップ2に、上智大学を加えて、その次に、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)と言われてきました。
また、ミッション系とバンカラ系のカラーに分かれるという話も昔から変わらないと考えていました。
その中で、明治大学だけが変革を続けているという話はニュースにも取り上げられ、受験者数でも、人気も急上昇したのは不思議な話でした。
今回、この明治大学躍進の謎を解くのは、企業や経営者を掘り下げる著書では名高い、上阪徹さんが切り込む一冊を見つけて、引き込まれるようにして読みました。
私は、明大生がモテるというのは、知力や魅力なのかと思っていましたが、オシャレさでモテるということに驚きました。
明大生がオシャレ?!門も壁もないキャンパス?
このオシャレなイメージが、明治大学へ入学したい女子高生を増やし、人気を押し上げてきたそうです。
確かに、日本初の高層ビルキャンパス(リバティタワー)を御茶ノ水に作り、中野キャンバスも含めて、門も壁もないという話に驚かされました。
現代では、どの企業であっても、セキュリティには厳しくなっており、フリーで立ち入れる環境は減っています。
このオープンな環境と街も取り込んだキャンパスの存在は、明らかにブランディングが関わっていることは想像できます。
広報強化、新規学部設立、留学助成、図書館の良さ、など
明治大学が何に取り組んできたのか、上阪さんは関係者にしっかりとヒアリングをしながら事実を明らかにしていきます。
広報活動に力を入れ、入試だけではなく、研究分野も含めて世の中に情報発信を続ける姿。
さらに、大学であるにもかかわらず、ゆるキャラの「めいじろう」までOKという取り組み方もユニークです。
日本文化を世界に発信することを目指す新規学部を設立するなどのアプローチもし、差別化をしていくうえで重要です。
1人あたり最大300万円の留学助成金が可能な国際化への取り組みと、1000人規模の給費奨学金の制度も整備されている。
「就職の明治」の力量も評価としてはポイントになる
就職率を高めることが大学の選ばれる基準になっていますが、明治の力は就職支援部門の手厚さ、インターンシップ先企業の開拓と、学生へのフィードバックまで行っているのは珍しい。
就職難の時代でも、売り手市場の環境でも、学生に就職への意識と意欲を駆り立てる仕組みは、「就職の明治」と呼ばれる実態を知ることができました。
しっかりと入試で選抜した優秀な学生を育て上げて、社会に送り出す役割を担っているのであれば、当然、親も企業担当者も高い評価をもって明大生を見ているのは確実です。(個人差は避けて通れませんが)
学長と理事長のリーダーシップと満足せず先を見据える学校組織
学長と理事長の二頭体制でありながら、教授や教員たちが、未来に向けて本気で取り組み、新しいチャレンジをして、現状に満足していないからこそ、明治大学の躍進が続いているのだというのが、上阪さんの本を通しての評価です。
確かに、常識に縛られずに、果敢に挑めるのは、勇気と行動が伴うリーダーたちが紡いできた結果が世間に伝わっているという証拠です。
学生のために、何でもやろうという本気度の熱と、センスの良さが伝わってきます。
明治大学の弱点はないのか?日本の大学の未来は何が必要なのだろう
では、死角はないのか?と、意地悪なことを聞いてみたくなります。
これからの時代、大学生の総数は減っていくのは少子化の流れで避けられません。留学生を受け入れたり、魅力的なものを増やすこと、社会人大学院などの整備でターゲットを広げて行くのかもしれません。
今回、実態としてわからなかったのは、年代を問わず、オープンに学べる環境の存在の有無でした。
単科講義レベルの聴講学生を増やすなどの、多様性が視野に入っているのかという点がきになりました。(放送大学のリアルキャンパス版みたいなものをイメージしています)
せっかく、門も壁もないオープンな大学ならば、GWや夏期休暇の短期集中型の大人の学びを提供したり、物理的な距離を超えてのインターネット利用の双方向型の教育、社会問題や事業への参加型の研究など、もっともっとやれる分野は埋もれているような気がします。
大学のカラーの良さ、個別の学生のレベルの高さはわかるのですが、社会に与えているインパクトという点では、そこまで高まっていない部分があるから、このような本が世に出てきたのではないかと考えてみました。
専門性を高めることは、これからの時代を生きる人には必要になります。
仕事にダイレクトに響くことだけでなく、自分の強みを伸ばすにはどうすればいいのか。
明治大学も気付いている「多様性」をどこまで広げながら、価値を提供していけるのか。
学びだけでなく、様々な経験値を高める場、友に出会い、成長する時間。
ジェンダーを取っ払い、グローバル化した先には、ジェネレーション突破が最大の鍵になると考えています。
4年間で、学び、様々な経験値を高め、友に出会い、成長していくもの。
そして、就職していくという一連の流れをキープしつつも、より多様性に対応し、切磋琢磨されていけば、明治大学に限らず、大学の価値は高まり続けるのだと思います。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
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