魁皇博之『嫌いなことでも好きになれる』に込められたメッセージを感じる

大相撲といえば、私の場合、若貴ブーム時代の印象が猛烈に残っています。

その後、時代も変わりつつ、各種トラブルも起きて、人気が右肩下がりの相撲界の現状。

外国人力士が上位陣を占めて、親方・力士共に問題を起こしていることで、厳しい目を向けられています。

そんなことを頭の中をかすめていた時に、図書館で目の前に飛び込んできた一冊『嫌いなことでも好きになれる。』魁皇博之さんの9年前(2011年)に発刊されたものでした。

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魁皇が現役引退直後、親方1年生の時に語った話

長年、大相撲で大関を務め上げた魁皇の存在を忘れられないのは、大人しく地味だけども、愛された力士だったからではないでしょうか。

なぜ、あれほどまでに長い現役力士として活躍できたのか。その裏にある本音や事情を知りたいと思って、この『嫌いなことでも好きになれる。』を読み進めてみました。

好きではなかった相撲の道を選んで1047勝も積み上げた男の話

魁皇博之(著)『嫌いなことでも好きになれる。』の中で24年間の現役力士時代を振り返っています。

あとがきの中で、魁皇(浅香山親方)は以下の通り語っています。

本書はいわゆる自伝ではありません。

まがりなりにも24年間、現役を務めた自分のやり方を、改めて振り返ったものです。しかし、それらは長く現役を務めるために行ったわけではありません。結果として、24年という数字が残ってしまったのです。

自分には力士という職業しかできませんでした。

右上手からの力強いまでの強引な投げ技の印象の強い魁皇関でしたが、彼は、相撲取りになりたいと思って、角界入りをした訳ではなかったと振り返っています。

師匠に言われる通り、四股を踏むという基本を徹底して、同世代・同期の人気力士よりも遅れて、徐々に出世して、大関まで辿り着きました。

その結果が1047勝という実績になり、40歳まで現役を続けられた結果なのです。

大関昇進後は、ケガとの戦いで、休場や負け越しなどの憂き目にも合いながら、突き進んだことを正直に語っている内容でした。

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他に趣味もないから相撲とケガと向き合ったから

相撲取りであっても、多才多趣味で、注目される力士たちもいるなかで、魁皇は淡々と相撲にだけ向き合ってきた様子が伺えます。

他に趣味らしいものもない、なんて言い回しは、世間のサラリーマンの悲哀に近い言葉にも聞こえます。

「好きではないけども、淡々と仕事をこなしていくしかなかった」

というサラリーマンの本音に近いものを受け取ることができます。

一方で、ベテラン力士・大関になってからは、けがに見舞われた日々。

蓄積されたダメージと年齢による回復の遅れは拭えなかったことでしょう。

それでも、本場所などでは、必ず応援される力士であったことからも、強さだけでない、真摯に相撲に向き合う姿は、人の心を動かせる存在でした。

横綱にならないことで長年現役を続けてこれた

魁皇自身も語っていますが、千代大海と魁皇は、引き際の見えなくなった大関でした。

横綱になれるチャンスを逃し、カド番を味わいながら、ケガと格闘し、自分たちの大相撲の力士としてのキャリアゴールが見えなくなってしまったのでしょう。

番付を上げていく、相撲界のなかで、トップの横綱にまでたどり着けるのは、限られた人間です。

もし、一気に駆け上がれたとしても、心身のダメージにより、短い期間で引退に向かった横綱たちは何人も出ています。

一方で、大関の場合、カド番を乗り切れば地位は安泰。大関を陥落しても、関脇以下で幕内力士として生き残る道はあります。

魁皇も1000勝以上を積み上げてきたというのは、負けた分も含めて、場所に挑み続けてきた賜物です。

記録だけでなく、記憶に残る大関だったと誰もが認めてくれる存在なのはいうまでもありません。

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好き嫌いで判断することに時間をかけたっていい

今回、『嫌いなことでも好きになれる。』を手にとって読もうと思ったのは、魁皇関の振り返りを読みたい気持ちよりも、このタイトルに惹かれたのが理由です。

好きなこと、夢中になれることだけをやればいい、という風潮の著書や有名人が増えているなかで、その言葉を信じて、輝く若者もかず多く輩出しています。

一方で、好きなことや夢中になれることでは生きていくことができず、生活のための仕事に打ち込むしかない人生を歩んでいる人もいます。

その中には、嫌いなことを我慢しながら日々を過ごすという、つまらなさや、つらさを感んじているのは想像できます。

それに対する答えは、魁皇が語る本書の中に、嫌いなことにも向き合い、日々鍛錬をしていたら、好きになっていたという「石の上にも三年」な世界が広がっています。

当然、古い考え方で、やりたいことを見つけるまで、ジョブホッパー的に生きればいいという世の中の流れも認めますし、共感される人が多いのもわかります。

一方で、不器用なまでに、好きなことが見つけきれず、目の前の好きでもないことや嫌いなことに向き合っていたら、人生が変わるという姿も実在していることを、魁皇が示しています。

どちらがいい、悪いという二元論ではなく、どちらもあるので、選択と判断は、個人によるものという、つまらない結論になります。

自分が無理で限界だと感じるのであれば、歩んでいる道を変えればいいだけだし、この先には素晴らしいものが待っていると思うなら耐えてでも踏み止まって頑張ればいいだけの話。

人生は短いし、無駄なことは嫌だから、判断の期間を短くして、突き進めという論調も間違っていないですが、人として迷い時間をかけることにも価値があるというスタンスも理解しておいて損はないと思います。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。