歴史に名を残す人物というのは、常人ではできないことを成し遂げています。
渋沢栄一も、一度の人生で活躍するには多方面すぎて、彼の才能や行動が明治という時代を引っ張る原動力だったのが、よくわかります。
一方で、知られない側面を人物伝として掘り下げてくれていたので、『渋沢栄一:よく集め、よく施された (ミネルヴァ日本評伝選219)』は良書だったと讃えたいです。
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渋沢栄一は、時代の流れの中で、賢く誠実な生き方をした男なのか?
2021年は、大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一が注目されたのでしょうか。
個人的には、もう少し、渋沢栄一の深い部分に触れて欲しかったというのが本音です。
幕末から明治という激動の変化の時代の中で、賢く誠実な生き方をしたと断言してもいいのか、少し冷静に見つめてみます。
完璧な人間はいないが、弱者への眼差しを持った実業家だったのは間違いない
偉人伝を読むと、本人が完璧な人間のように描かれがちです。
実際の、渋沢栄一とは、埼玉の百姓の息子から人生をスタートさせて、商いのセンスを磨き、徳川慶喜に見出され、ヨーロッパの進んで技術や社会に触れて、明治時代の実業界をリードした人物。
この理解は間違っていません。
彼の行動力、推進力によって、産業が起こされて、発展してきたことは間違いありません。
その側面だけを見ると、ただのビジネス大好きオヤジになるのですが、彼のもう一面、弱者への眼差しを忘れてしまうと本質を見誤ります。
『渋沢栄一:よく集め、よく施された (ミネルヴァ日本評伝選219)』を読んで、この両面を知ることができたのは武田晴人さんの丁寧な研究成果として受け取れ、私の渋沢栄一という人物への理解が深まりました。
100社以上の起業に関わったものの大資産家とは言い切れない
次の1万円札の顔と言われるものの、渋沢栄一が何をしたのか、というのは、それほど取り上げられることがなかった気がします。
おそらく、1つの事業に特化して、大成功を収めた人物と比べると、多くの起業に立ち会い、経営をスタートさせる役割を果たしていたものの、メインがはっきりしないのです。
企業組織というものが存在しない、明治維新後、ヨーロッパで学んできた技術、考え方を積極的に日本に根付かせようとしてきた人物の一人が、渋沢栄一です。
彼が関わった企業は株式会社に限らず、合弁会社など小さなものまで含めると100社以上。
当然、大成功を収める企業ばかりではなく、倒産や借金なども背負うケースもあったのはいうまでもありません。
とにかく、日本に産業を根付かせるために、走り続けた男です。
それなのに、渋沢一族が現代で大資産家になっていないというのがポイントです。
彼は、株式の配当などで得た利潤を必ずしも、金儲けだけに使っておらず、社会貢献的な事業に施すこと、また、そのための資金を集める行動の天才だったのだと言われています。
女性関係は奔放だった話は歴史の表舞台からは消される
「英雄色を好む」ではないですが、やはり、歴史上の人物は、異性関係は奔放だったのは想像できます。
ただ、歴史の表舞台からは、その手の話は消されてしまうのが常。
複雑な家族構成を抱えていたことからも、若かりし頃の渋沢栄一は、エネルギッシュで魅力がある人物だったのでしょう。
彼と関わったすべての女性、子孫が幸せとは言い切れないでしょうが、彼がいなければ、成り立たない人生もあったでしょう。
社会福祉を支える気持ちは、名誉ではなく人間愛だったのだろうか
『渋沢栄一:よく集め、よく施された (ミネルヴァ日本評伝選219)』を読むと、彼が実業分野で活躍する時代と、同時並行的に社会福祉的な活動、社会事業にも情熱を傾けていた印象が強く残ります。
貧しい、苦しい人たちを刺させていかなければならないという人間愛があってこそ、彼の後半の人生は磨きがかかっています。
社会事業に手を出す事業家を名誉欲に駆られた人物と揶揄される場面も見ますが、渋沢栄一の場合、明かな人間愛みたいなものがあったと感じます。
海外との交流で、日本を訴えることには成功したとは言い切れないものの、自らの役割を果たすために、長い人生を使い切ったという点は、素晴らしいと拍手を送れます。
金儲け至上主義の方には、是非、渋沢栄一を見習って欲しい
ビジネスで勝負をしたい人物は、金儲け至上主義、規模で勝負をする人がたくさんいますが、是非、渋沢栄一の姿を見習って欲しいと感じます。
もちろん、彼の邸宅の規模などを考えると、贅沢を全くしていないとは思えません。
今回、彼の人生を掘り下げて理解を進めると、自分のことだけでなく、社会全体を広く見れていたことが伺えます。
どんな相手の相談にも耳を傾けて、自分ができること、相手に促せることに全力を傾けた人生を送っていたからこそ、後世の人々が敬愛する存在になっています。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。