最近、日本人だけでは作れない映画(邦画)は増えています。
出演者もスタッフも、ロケ地も考え方も含めて、純粋な邦画という領域が変わろうとしているのかもしれません。
今回の「PLAN 75」は、日本の近未来にありそうな設定を早川千絵監督が初長編作品として、メガホンを取り、倍賞千恵子を主演にしたことで、全体的にリアルティを感じさせるものでした。
第95回アカデミー賞・外国語映画賞部門に選ばれた日本代表作品なのもうなづけます。
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予告編を見て、見るのを躊躇してしまった作品
「PLAN 75」は、予告編を見た瞬間、なんとなく切なさがイメージできて、見るのを躊躇していた作品です。
意外な展開などは考えにくく、見終えた後に残る感想が想像できていたので仕方ありません。
ただ、倍賞千恵子さんの演技がいいと言う評判を聞いて、見ることを決断しました。
人生後半に生死を選択できるって喜ばしいことなのか
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本では、満75歳から生死の選択が可能な制度<プラン75>が国会で可決・施行されたという前提で展開されています。
少子高齢化が進む日本にとって、医療費・介護費用など社会的なコストの負担が嵩むのは間違いなく、その負担を減らすために、このような暴挙のような制度が実現されたら、という、もしもストーリーです。
この批判を浴びそうなストーリーだからこそ、倍賞千恵子さんの物静かで抑えた演技が光ります。
感情を露わにするのではなく、周りの状況を見ながら、取捨選択をしなければいけないという展開の中で、生きていく姿こそ印象を強く与えています。
残酷な部分をあえてカットしていることで見ることができる
冷静に、この映画のストーリーの設定を考えると、残酷なシーンを描くことも可能なのでしょうが、視聴者の想像力に委ねてカットしているので、最後まで見ることができたのだと思います。
もし、複数名が一緒に死に向かうシーンがクライマックスになっていたら、大批判を受けてしまうのは避けられません。
ただ、孤独な老後を一人で過ごして、孤独死をしてしまうぐらいなら、この選択を選びたい人も出てくるでしょう。
もちろん、大半の人は、医療の力でなんとか少しでも長生きしたいという願望を抱えていることは理解できます。
後期高齢者は、生きづらいと感じたり、社会に貢献できていないのか
2021年のインターネット配信番組で、「(少子高齢化の)唯一の解決策は、はっきりしていると思っていて、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないか」と発言したのは、経済学者で起業家でもある、成田祐輔さんです。
この発言をマイルドに映像化すると「PLAN 75」そのものになると感じました。
確かに、健康的な不安も抱えて、体力も人付き合いも含めて衰えている世代の後期高齢者たちは、病院での治療や介護施設の支援が必要になる人が多いのも事実。
そのコスト負担を現役世代が担うだけとしたら厳しいのもわかる一方で、かつて、日本社会を支えた方々を雑に扱うのも問題だと言えるでしょう。
強制ではなく、生死の選択権を与えるという考え方がポイントで、本人が選ぶことができるわけですが、生きづらさや社会への貢献度を実感できなくなると、必然的に、死を選択してしまう人も出てくることが想像できます。
「PLAN75」が実現する社会が来ないことを願う
映画を見終えて、ものすごく切ない気持ちになりました。
75年も生きてきて、自分の人生の終わり方を選択できると言えば聞こえはいいものの、明らかに排除されていく姿に映りました。
私は「PLAN75」のような制度が実現する社会が来ないことを願うばかりです。
だって、私も生き続けていたら、いつか対象者に含まれる可能性があるのですから。
もちろん、あなたも同じですが。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。