池井戸潤さんの小説『半沢直樹』『下町ロケット 』『陸王 』『ノーサイド・ゲーム
今回、『空飛ぶタイヤ 文庫 (上)(下)』が映画化された作品をAmazonプライム・ビデオ
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「空飛ぶタイヤ」というタイトルが興味をそそる映画
池井戸潤さん原作の初の映画化作品として2018年に公開されたのが『空飛ぶタイヤ
TOKIOの長瀬智也さんが主人公を演じるという点も話題を呼びました。
映画冒頭の死傷事故シーンで、実際に脱輪したタイヤが空を飛んでスタートします。
調べてみると、この原作本は、2006年に刊行され、第28回吉川英治文学新人賞を受賞し、第136回直木三十五賞候補作品でした。
タイヤ脱落事故と大手自動車メーカーのリコール隠しをテーマにしており、2002年の某大手自動車メーカーのトラック脱輪事故と、リコール隠しという実話をベースに作られたのがわかります。
それだけに映像化されるのは難しい経済小説かと思いきや、2009年にWOWOWでテレビドラマ化されていました。(スポンサーの影響を受けにくい、有料放送の番組だから成立したという話があります)
今回の映画が初めて見たという感覚がしなかったのは、このドラマの宣伝を以前、目にしていたからだと思います。
誰が悪いのかという原因論の前に、人が亡くなっているという事実を見落とさない点が重要
『空飛ぶタイヤ
大手自動車メーカー内の対立、隠蔽工作などが展開される中で、一番大切なことを忘れかけてしまいます。
冒頭のシーンで子連れで歩道を歩いていた女性に大きなタイヤが飛んできて、亡くなってしまったという事実の部分です。
被害者遺族は、運送会社であろうが、大手自動車メーカーであろうが、原因をはっきりさせて欲しいという思いはありつつも、失われた命は戻ってこないという現実。
社会正義を問うような経済モノの作品の場合、対立のうえ、真実が暴かれていくことにワクワクさせられます。
現実問題としても、同じようなニュースが取り上げられていく中で、人の命という取り返しのつかない問題を軽視してしまうことはないでしょうか。
事故原因究明に意識が向かいすぎると、時間の経過とともに薄れてしまう、この命の問題。
そこを真摯に向き合っていたので、この作品は全体として見事に構成されていると感じました。
事件・事故は、被害者になるだけでなく、意図せず加害者側になる場合は避けられない
今回の作品『空飛ぶタイヤ
私も、仕事上、大きなリスクのあるトラブルの末端に関わったことがあります。
WEBサイトへの不正アクセス事件と呼ばれるカテゴリーのものです。
実際は、私は上長や経営幹部に報告しながら、最前線で経過を見てきた当事者です。
一部ニュースにも流れて、最終的には犯人が捕まるという意味で、サイバー犯罪としては初期のものでした。
不正アクセス行為によって、大きな損害は出なかったものの、情報を抱える立場として、顧客に多大なる迷惑と心配をかけたことは事実です。
犯人への怒りもありつつも、当然、顧客のクレームの最前線に身を置きました。
今でも思い出すのは、私たち側は被害者でありながら、加害者でもあったという複雑な背景があったことです。
もちろん、事件の犯人がそのものが悪だったとしても、それを防げなかった側の立場であり、大きなトラブルの手前で解消できました。
ただ、大丈夫であったことを顧客に説明するのは、とても難しいものです。
不正アクセスがあったという事実が報道された時点で、関係者に不安を与えて、説明責任を果たす側になったのだから、当然です。
言われなき非難も受けましたし、社内体制としてセキュリティのトラブル時の事例になりました。
実際は、未然に防げたものの、被害を受けるリスクがあった顧客との信頼関係を崩してしまいました。
どんな事故・事件も、突如、目の前に発生して(計画的な犯行は別として)、加害者になるつもりがなくても、関係者の当事者にならざる得ません。
今回の『空飛ぶタイヤ
社会派の小説・ドラマは、エンターテイメントにはならないけど、自己投影はできる
池井戸潤さんの作品のように、実社会のテーマを扱うと、誰もが当事者に近い感覚で自己投影できます。
もちろん、社会悪ではない立場に身を置きたいと思いつつも、自分が守るべきものによっては、善悪があい乱れることになります。
ディズニー作品などのエンターテイメントとは違い、ハッピーエンドを迎えられないで終わるしかないのですが、救いのない作品ではありません。
つまり、作品の登場人物の誰と自分が近いのか、自己投影をしながら、味わえる部分にポイントがあると思っています。
好き嫌いが別れるのは仕方ないですし、誰もがワクワクする作品にはなりえません。
自己投影する相手が、スーパーヒーローでないところ、弱みもズルさも出てしまう人間くさいことによって、共感できるので私は、この手の作品が好きです。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
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