『越境学習入門』で冒険人材を育てるという考え方を知る

境界線や国境を越えることを「越境」と言います。

私の記憶では、地域の学区の学校外に通うことを「越境」と言っていた記憶があります。

となると、「越境」という言葉には、一定のラインを乗り越えてしまうイメージがつきまといます。

越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』を読んでみました。

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「越境」というワードの価値が上がっている!

越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』だけでなく、『新時代を生き抜く越境思考 ~組織、肩書、場所、時間から自由になって成長する』という本も人気本になっています。

それだけに、現在地に留まるだけでは、打開できない課題や問題が山積みな時代なのです。

だからこそ、誰もが勇気を持って、固定概念を突破して、「越境」してみようというアプローチが、胸に響くのです。

越境することで個人の経験が広がり、組織に還元される

個人が現在の場所を離れて、越境することで学んだことにより、個人のみならず組織にも還元されるというスタンスで「越境学習」が述べられています。

確かに、ホーム(当社・弊社・我が社)という考え方の中だけで長年過ごすと、考え方、やり方ともに固定化してしまうという問題があります。

だからこそ、ホームを離れてアウェイに行くことで、今まで通用したものがうまくいかない世界に格闘することによって、新たな視点や能力が磨かれるというのは素晴らしいことです。

まして、アウェイからホームに戻るという形式での越境学習であれば、ホームの中で、自分が冒険してきたような経験を還元することによって、組織内にイノベーションが起きる可能性が生まれます。

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「越境学習」は理解できるが、モヤモヤするのはなぜか

この『』を読んで、「越境学習」という存在のユニークさと価値は理解できたものの、どうも気かがりなポイントが残ります。

・大手企業からベンチャーへという一方通行な流れ

・組織の中で業務命令で行かされたらやる気になれないのでは?

・越境先は何を期待しているのか?

・越境はパラレルキャリアではなく一時的なレンタル移籍に限定するべきなのか?

一つ一つの内容を掘り下げて述べてみます。

・大手企業からベンチャーへという一方通行な流れ

今回、取り上げられたケーススタディや「越境学習」をキャリア形成・支援に活かしたい人事研修的な部門の発想が軸のため、どうしても堅苦しさが抜けない印象が残ります。

特に、大手企業に在籍している社員が、最大1年間ベンチャー企業で体験して戻ってくる、という一方通行的な流れを決めてしまっている点です。

「越境学習」を企業で社員にチャレンジさせられるのは、大手企業だけであり、受け入れ先はベンチャー企業(スタートアップや中小企業含む)に限っている印象です。

もちろん、ベンチャー企業の人材が、大手企業に一定期間修行のように働くというイメージは湧きません。

むしろ、彼らは大手以外を選択して(選択させられたとも言えますが)、不安定な要素の中、チャレンジを続けています。

役割分担もきめ細かくできない部分があるでしょうし、ルールも方針も、頻繁に変わるのは避けられません。

ベンチャー企業には、成長性を確保するためのスピード感が求められます。

この世界に、大手企業で長年育った人たちが、成果を出す場面で活躍しようと思うと、ミスマッチに近いものは生まれるはずです。

そうはいうものの、一方通行ではなく、ベンチャー企業から大手企業への「越境学習」も必要なのではないかと感じます。

・組織の中で業務命令で行かされたらやる気になれないのでは?

越境という行為を、企業組織で行う場合、業務命令でやらされていたら、本来の越境の価値は見いだせません。

あくまで、本人の意思で、越境をして新しい知見を学んでこようという意欲がなければ、やる気が生まれてきません。

おそらく、転職するほど、自社に対して愛想を尽かしておらず、何か足りないものを感じているような人材に「越境学習」的な経験の価値を伝えて、理解してもらわなければなりません。

おそらく、「越境学習」に安心して取り組むには、一定の期間を定めて、現在の給与を保証して、戻ってくることを大前提にしなければ、個人が手をあげてはくれません。

決して、異動や出向のように、会社都合で個人を指名して業務命令という形で推し進めることだけはやめてほしいと考えます。

・越境先は何を期待しているのか?

越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』のケーススタディで書かれていなかった話として、越境先の企業・組織は、何を期待しているのか、という点を無視するわけにはいかないでしょう。

大手企業の社員がベンチャーやスタートアップで学ぶというのは理解できるのですが、実際に越境先企業・組織で待ち受ける側は、越境してきた人材に何を求めるのか、という点を明示しておかなければ片手落ちです。

一人何役もこなさなければならない、ベンチャー企業であれば、猫の手も借りたいので、ビジネス経験豊富な方の経験や知恵は役立つはずです。

おそらく、双方の間では、スケールやスピード感が異なりますし、意思決定のスピードも違うので、ピッタリとフィットするとは思えません。

まして、ベンチャー企業にチャレンジして転職を決めたわけではありません。

あくまでも、アウェイの環境に身を置いているに過ぎないのです。

おそらく、学生主体で立ち上げたベンチャーでなければ、何らかのビジネス経験を経て、集まったメンバーでしょうから、コミュニケーションは成り立ちます。

越境先で明確な成果を出せずに、戻っていくケースが並んでいます。

個人や越境元の大企業にはメリットがありますが、越境先には職場への異文化コミュニケーションのような関係性でアイデアが交錯して、事業ヒントは生まれる可能性は生まれます。

即効性のある結果を、越境していた人材に求めても、正直、厳しいと言わざるえません。

・越境はパラレルキャリアではなく一時的なレンタル移籍に限定するべきなのか?

今回の本は、大手企業の人材育成などの部門で働く方たちを読者として想定している様子。

当然ながら、人材の流れは一方通行になりますし、個人が自らの意思で取り組む「越境」とは大きく異なります。

また、本業ともう1つの仕事的なパラレルキャリア(副業)とも異なっています。

あくまで、一時的なレンタル移籍(サッカー選手のように)に限定して語られています。

人材の流動化は動かない人たちに変化が起きてこそ、本当の価値が生まれるのは理解できます。

本来は、パラレルキャリア的にWワーク(副業)な活動でも構わないし、レンタル移籍後、本格的に転職するためのトライアルでも構わないのではないでしょうか?

つまり、社会人のインターンという発想です。

越境学習的な就業経験は、大人のキッザニアを体験すればいい

離職した際に、職業訓練校で新しい技術やノウハウを学ぶという人は、今も存在していますが、どうしても、学ぶことと仕事に生かすことがスムーズにリンクできないことが多い。

なぜならば、やりたいことがそのまま仕事になる、安定した収入を得て生活できるとは限らないもの。

私は、まずは、大人のキッザニア的な場所で、日頃、自分とは違う世界の仕事を体験してみて、どう感じるのかが大事なのだと思います。

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自分の意思で自由に外の世界にチャレンジできる人であれば、躊躇なく、転職や、ライフシフトを展開できます。

既に、日本国内でも転職市場が活況を帯びているだけに、越境学習などという意識が必要ない個人も増えているのだと感じます。

一方で、安定感を求めて、大企業や官公庁に就職した人間の中には、組織の論理やルールに従って過ごすのが染み付いた人たちにとって、越境学習は不可欠です。

今までの社内のJOBローテーションなどでは足らずに、業界・業種、職種も超えたチャレンジが必要な時代です。

自分自身を変えるためにも、他の世界を見るというアクションが欠かせないのです。

ブレインストーミング的なアイデア出しは古い!自発的に越境する大人になれ!

昔ならば、何かのアイデアを出すために、さまざまなメンバーを集めて、ブレインストーミング的な方法でアイデアを出し合うことに価値がありました。

口先だけでの思いつきに自由度が生まれる環境があれば、今でも役立つアプローチです。

実際、人間は、現状を受け入れて甘んじて適応していく動物です。

最初は違和感があったストレンジャー(部外者)であっても、時間の経過とともに馴染んで、同質性が高まってしまうのは避けられません。

結果として、日本の大企業や官公庁などは、前例を重視して、イノベーションを起こせずに、DX化だけを目標に掲げてスローガンを作ってしまうことがよくあります。

個人も組織も、自発的に動いて、少しでも越境をしてしまうような状況を自然体で生み出す必要を感じていませんか?

大きなチャレンジはできなくても、多少は失敗の策であって構わないので、どんどん、越境してしまう人間たちが増えれば、世の中の流れは大きく変わってきます。

越境なんて考えが常識になれば、わざわざ、こんなテーマを取り上げる人間はいなくなるかもしれません。

越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』を読みながら、さまざまなことを考えてみました。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。