東野圭吾『透明な螺旋』で気づいたのは、 ”天才ガリレオ=湯川学” だって人の子だってこと

変人ガリレオ・湯川学(物理学者)も、デビュー作から時間が経ってきました。

主人公も歳を重ねて、風変わりな実験を学生としている准教授から、教授になり、求められる役割も変わり、もちろん、周囲との関係性も変わってくることはあるのでしょう。

今まで語られなかった、主人公の家族の話について、さりげなく盛り込むとは、衝撃作なのですが、人間らしさが増えると、ガリレオではなくなってきたような気もしました。

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家族の話、自身の出生に関わるネタが出てくるとは

物理学者として、事件の解決に嫌々、協力していた湯川学という存在は、変人の要素がたくさんありつつ、人間ですから、家族がいるのは当然のこと。

今まで、恋愛的な話も出なければ、子ども嫌いなキャラクターでもあったので、独身貴族なのは想像はできても、彼の両親という観点で物事を考えたことはありませんでした。

もちろん、学生時代の彼女と6年付き合って別れた話なども、さりげなく盛り込まれていたのが、『透明な螺旋』だったのですが。

いつも事件に引き込まれるけど、今回は趣が違う!

事件の謎が複雑怪奇だから、変人ガリレオ・湯川学に捜査協力を求める草薙俊平警部と内海薫巡査部長という関係性は以前から変わらずなのですが、今回は、いつものように事件に巻き込まれるスタイルとは異なります。

捜査線上に出来てきた、絵本作家と湯川がメールでやり取りをしたという事実から登場し、その伏線が最後に向けて意外な展開を呼び込むストーリー。

彼自身も、教授になったことで、研究や実験以外の学内外の様々なことに関わらざるえない立場も垣間見られます。

なぜ、冒頭に戦後生まれ世代の古い話がエピローグのように書かれていたのか、意図が掴めなかったのも、最後の最後には回収するのは、東野圭吾らしさで満足させられます。

人の人生は長い時間の中で、大きな変化を遂げるものであり、今のようにインターネットがなければ、人も情報も探しきれなかった当時との違いも感じつつ、まさか、誤解が埋もれながら、ラストを迎えていくとは。

事件の大事な関係者と湯川の接点が、さらっと明らかにされるまで、この本が「衝撃作」と言われる理由がわかりませんでした。

家族の話が出てくると東野圭吾のシリーズはエンディングかも

ただ、このガリレオ第10弾の一冊の展開に、既視感がありました。

東野圭吾のもう1つの人気作品・加賀恭一郎シリーズの『祈りの幕が下りる時』に出てくる、失踪した母親の存在です。

連続シリーズの後半、主人公の親に関する話を盛り込み、今までのキャラクターのバックボーンになる部分を盛り込んでくるやり方は似ています。

あんてる
もしかしたら、東野圭吾さんも歳を重ねて、家族、特に親を絡めたノスタルジーなエッセンスを盛り込む作家になったのでは?

今までの個のキャラクターが際立ったことで、それを生み出した親、過去という視点に掘り下げていくことが間違っているとは思いません。

逆を言えば、湯川学や加賀恭一郎が結婚して、よきパパをしている姿を想像する方が難しいのですから。

大人になって親を語りたくないけど、避けられない部分はある

私も、プライベート100%のブログ記事にしたいとは思わないものの、自分の父親のエピソードが混ざるブログ記事を何本か書いています。

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自分の親が生きてきた、育ってきた時代を共有するのは、難しいものです。

なぜならば、私の親の写真などは貴重なものであったし、古ければ白黒だし、その写真に写っている親以外の人物が誰なのかわからないことも多いので。

ただ、不思議なことに、自分の年齢が親と一緒に過ごした年齢になったり、自分が子どもを育てる親の立場になると、親のことを色々と考えるようになります。

あんてる
あの時は、あんな気持ち、考えで自分と接してくれていたんだよなー。いや、でも、それは何か違うぞ、どういうことだ?など

DNA(遺伝子)としての関係だけではなく、一緒に過ごした時間も踏まえた、様々なもの、例えば生活習慣や考え方のベースなどは、明らかに影響を受けています。

湯川学の両親(育ての親)、および、生みの親という存在があったからこそ、彼は、このシリーズの中で存在していると考えれば、このエピソードを盛り込む必要はあったのだと納得します。

人の代わりに人を殺める話に何を感じるのか

東野圭吾は推理小説の巨匠ですから、当然ながら、殺人事件が舞台に取り上げられます。

しかも、ストーリーを単純にしないために、誰かのために、誰かを殺めるという、代理殺人的な行為が、謎を深めてしまうことになり、犯人が誰なのか、なぜ、こんな展開に、というところに切り込んでいきます。

単純なトリックだけでなく、シンプルではない人間関係を加えることで、物語に厚みと、深みが出て、読者を飽きさせないのが、東野圭吾の型だと思います。

ふと思うのは、湯川学教授(変人ガリレオとは呼びにくい立場・肩書きになってますよね)が、大学を退官したら、このシリーズは終わるのだろうか、という点に注目しています。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。