聞き役にも、話を聞いてもらう場所が必要だ|支える人のサードプレイス

人の話を聞くのは、嫌いではありません。

相談を持ちかけられたり、近況を話してもらえたりすると、頼ってもらえているようで、うれしくなることもあります。話し始めたときには曇っていた相手の表情が、帰る頃には少しやわらいでいる。そんな時間に立ち会えるのは、人と関わる楽しさのひとつでしょう。

けれど、相手の話を聞き終えて、一人になったとき。ふと、こんな気持ちが浮かぶことはないでしょうか。

「今日は、自分の話も少し聞いてほしかったな」

聞き役にも、話を聞いてもらう場所が必要です。

誰かを支える人も、困ったり、迷ったり、弱音を吐きたくなったりする。その当たり前のことを、私たちは自分に対してだけ、忘れてしまうのかもしれません。

 

 

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「聞くのが好き」と「いつでも聞ける」は違う

職場で同僚の相談に乗る。家で家族の話を聞く。友人の愚痴を受け止める。コミュニティでは、初めて来た人が話しやすいように声をかける。

ひとつずつ見れば、日常のささやかなやりとりです。でも、その役割が一日にいくつも重なると、自分のことを話す時間がないまま、夜になることがあります。

相手が話しやすいように相づちを打ち、言葉になっていない気持ちを想像する。ときには、言いたいことを飲み込んで、相手が話し終えるのを待つ。

聞くという行為には、こちらの気持ちを動かす時間も含まれています。ただ黙って座っているわけではありません。

だからこそ、「聞くのが好き」という気持ちと、「どんなときでも聞ける」という状態は、分けて考えたいのです。

好きな活動でも、疲れていれば休みたくなる。それと同じように、人の話を聞くことが好きな人にも、今日は受け止める余裕がない、という日があっていいはずです。

頼られるうれしさが、負担に変わるとき

頼られること自体が、つらいとは限りません。

むしろ、「自分にもできることがある」「役に立てている」という実感が、日々の張り合いになることもあります。

ただ、頼まれることが続き、それに応えることが当然になってくると、少しずつ気持ちが変わる場合があります。

「このくらいなら、やってくれるだろう」
「話せば、いつでも聞いてくれるだろう」

そんな期待を感じるようになると、こちらの都合や疲れが、関係の中から抜け落ちてしまう。

感謝の言葉がほしくなるのも、必ずしも見返りを求めているからではないでしょう。「あなたにも時間や気持ちがある」と、気にかけてもらいたいのだと思います。

たとえば、相談が終わったあとに「今日は時間、大丈夫だった?」と聞かれる。それだけで、自分もこの関係の中で大切にされていると感じられることがあります。

聞き役が苦しくなる理由は、話の量だけではないのかもしれません。自分の存在が、便利な役割の向こうに隠れてしまう。その寂しさも、重なっているのではないでしょうか。

人と会っているのに、話せていないことがある

人とのつながりが多ければ、孤独とは無縁。そう単純には言えないと思います。

連絡を取り合う相手がいて、集まる機会もある。それでも、いつも相手の近況を聞き、困りごとを受け止め、自分の話は後回しにしていると、誰にも話せていない気持ちが残ります。

会話の回数と、自分の気持ちを話せる機会は、必ずしも一致しないのです。

もちろん、毎回きっちり半分ずつ話す必要はありません。今日は相手がたくさん話し、別の日には自分が聞いてもらう。そんな行き来があれば、自然に付き合えるでしょう。

気になるのは、「この人の前では、ずっと聞く側でいなければ」と感じる状態が続くことです。

自分が話し始めても、すぐに相手の話へ戻ってしまう。弱音を口にすると、いつもの自分らしくない気がして引っ込めてしまう。

その積み重ねの中で、「どうせ話しても仕方がない」と、話す前から諦めてしまうこともあるのではないでしょうか。

「しっかりしている人」にも、まとまらない話がある

周囲から「しっかりしている」「話を聞くのが上手」と思われるのは、ありがたいことです。

一方で、その評価に自分を合わせようとして、苦しくなることもあります。

冷静に受け止めなければ。前向きな言葉を返さなければ。自分の問題くらい、自分で整理しなければ。

誰かから直接そう言われたわけではなくても、いつの間にか、自分の中にルールができてしまう。

でも、普段は人の話を聞ける人にも、うまく説明できない悩みはあります。何が嫌だったのか、自分でもはっきりしない日もあるでしょう。

そんなときまで、わかりやすい話に整えてから差し出す必要はないと思います。

「まだ整理できていないんだけど」
「ちょっと疲れていて、うまく話せないかもしれない」

そこから始められる相手や場所があると、自分の気持ちを置き去りにせずに済みます。

話した結果、結論が出なくてもいい。ただ、「そう感じていたんだね」と受け止めてもらいたい日もあるのです。

サードプレイスをつくる人自身に、居場所はあるか

私は、サードプレイス・ラボを主宰しています。

人が出会い、言葉を交わし、日常とは違う視点に触れる。そうした場について考えるとき、参加する人にとっての居心地に目が向きます。

初めてでも入りやすいか。話しやすい雰囲気になっているか。誰かが取り残されていないか。場をつくる側として、大切にしたいことです。

そのうえで、もうひとつ問いを持っていたいと思います。

「ここは、主催する自分にとっても、安心できる場所だろうか」

主催者は、参加者の様子を見ながら、進行や時間も気にしています。楽しく過ごしていても、どこかに運営する人としての意識が残ることがあります。

だから、自分がつくった場に参加していることと、役割をほどいて過ごせることは、必ずしも同じではありません。

ときには、別の誰かが開く場に、一人の参加者として出かける。進行を任せ、話題を用意せず、ただそこにいる時間を持つ。

場をつくる経験がある人ほど、そうやって誰かの場に迎えてもらうことにも、意味があるのではないでしょうか。

聞き役を続けるために、小さく伝えてみる

では、どうすれば、自分も話せる関係に近づけるのでしょう。

いきなり人付き合いを大きく変えるのは難しいものです。まずは、普段の会話に小さな一言を足すところからでいいと思います。

「今日は、私の話も少し聞いてもらえる?」

相手が自分の疲れに気づいてくれるのを待っているだけでは、伝わらないことがあります。いつも聞いてくれる人だから大丈夫、と受け取られている可能性もあります。

「私もちょっと話したいことがあるんだ」

そう言葉にすることは、自分が会話の中に入るための入口になります。話し始める前に、相手にも今、聞く余裕があるかを確かめられます。

「アドバイスより、まず聞いてほしい」

話をすると、すぐに解決策が返ってくることがあります。相手の親切だとわかっていても、今はそこまで考える力がない、という日もあるでしょう。

そんなときは、聞いてもらいたい形を伝えてもいいと思います。

「今日は答えを出したいというより、少し話して整理したい」

最初に共有しておくことで、お互いの行き違いを減らせるかもしれません。

「今日は余裕がないから、別の日でもいい?」

聞けない日には、そのことを伝える。

簡単そうで、普段から頼られている人ほど言いにくい一言でしょう。でも、無理を重ねて相手への不満をため込むより、今の自分の状態を知らせたほうが、関係を続けやすくなることもあります。

別の日を約束するのも、本当に時間を取れる場合で十分です。「今は難しい」と伝えるだけの日があってもいいのです。

話せる相手は、一人ですべてを満たさなくていい

もうひとつ大切にしたいのは、一人の相手に、すべてをわかってもらおうとしすぎないことです。

家族だから、長い付き合いだから、同じ活動をしているから。そうした近さがあっても、話題によって、話しやすさは違います。

仕事の迷いを話せる人。活動の面白さを共有できる人。理由を詳しく説明しなくても、一緒にお茶を飲める人。

それぞれの関係に違うよさがあっていい。自分の話せる先を、少しずつ増やしていく。その選択肢のひとつとして、家庭や職場とは別のつながりもあるのでしょう。

最初から深い悩みを打ち明ける必要もありません。「最近、ちょっと疲れていてね」と短く話してみる。相手の反応を見ながら、話せる範囲を探していく。

親しい相手であっても、話したくないことまで話さなくていい。安心して話せることには、自分で話す内容を選べることも含まれていると思います。

支える人も、支えてもらっていい

誰かの話を聞いて、その人が少し元気になる。それは、うれしいことです。

そのうれしさを、これからも感じていくために、自分が話せる時間も大切にしたい。

いつも相談に乗る人も、場を整える人も、家族や職場で頼られる人も、自分の気持ちを誰かに聞いてもらっていいのです。

サードプレイスを考えるとき、「誰かの居場所をつくる」という視点に、「自分はどこで安心して話せるだろう」という問いも加えてみる。

そこから見えてくる、場のあり方や人との付き合い方があるはずです。

あなたには、聞き役を少し休んで、自分の話ができる相手はいますか。

もし、すぐに思い浮かばなくても、焦らなくて大丈夫です。次に誰かと話すとき、「今日は、私の話も少し聞いてもらえる?」と伝えてみる。その一言から始まる関係も、きっとあると思います。

 

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。