新しいスタイルの名探偵というのは、副業的や無意識なものなのかもしれない。
『左右田に悪役は似合わない』(遠藤彩見・著)を読んで、私が一言でまとめた感想です。
新潮社の中瀬ゆかりさんがラジオで勧めていたということで、手にとって読んでみました。
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昔の探偵モノは、本業・プロとして活躍していた
昔の探偵モノの作品は、探偵事務所の人間であり、探偵業をプロとして活躍している、特殊キャラでした。
尖った存在、変なこだわりを持ち、細部に目を光らせて、事件の謎を解く。
爽快でありつつも、役割が明確だったので、主人公が謎を解き明かすのは、誰の目から見ても明らかで、シンプルなモノでした。(トリックの複雑さは別として)
どこにでもいそうな脇役のおじさんが現場で事件の解決をする
左右田始(そうだはじめ)は、50歳の脇役、どちらかというと印象に薄い端役で登場している存在。
おそらく、起用に役をこなして、セリフにも棘がないので、印象に残ることは少ない。
ある意味、50歳の普通のおじさんが役者をやっている程度の感覚かもしれません。
作品の中にもある通り、彼は役者+副業的なことで生活が成り立っているのでしょうけども、武をわきまえて佇んでいます。
こんな左右田が、芸能界・撮影現場周辺で起きる問題や謎解きをしていくのが『左右田に悪役は似合わない』です。
1つ1つの話にはリアルティがありそうな設定であり、その中に、脇役的に存在する左右田が、自然体で解決していく物語だけに、さっぱりした自然派のミステリーに近い作品です。
ガツガツしないでトラブル解消・事件解決をする姿
若手の役者として主役で活躍して、スターになろうという野望が消えて、淡々と自分にあてがわれる役を無難にこなすという、物静かな男、左右田始。
脇役・端役だけに、出番は限られているし、イライラせずに、求められることをこなし、場合によっては、自分の出番がなくなっても怒らないというスタンス。
大手事務所系列にいるからこそ、生き残れているとも言えるのですが、この肩の力が抜けている感覚は、私がイメージしたのは、役者の野間口徹さんを、もっと薄めたようなイメージです。(野間口さん、ごめんなさい)
どんな役もこなし、出演本数も多いのに、彼が何の役をやったのか、正直覚えていないというのが、今回のキャラクター設定です。
もし、『左右田に悪役は似合わない』が映像化されたら、野間口徹さんに、主演をお願いしたいところですが、ヒットするのかは不明です。
でしゃばるのではなくて、自然と支える姿に大人の風格がある
年齢を重ねた人間は、実績や肩書きをもとに堂々としている人物と、自分に与えられた役割と淡々とこなす存在の二極化しているのではないでしょうか。
後者のような存在だと、全体の調和と自分に求められている役割をそつなくこなし、周りを自然と支える姿が目に映り、物静かであっても、大人の風格が漂います。
どんな場面でも乗り切れるのは当然として、捻くれるわけでもなく、淡々とやり抜く。
ある意味、派手なスターよりも、プロ意識としては高いレベルを維持しているとも言える存在です。
世の中には目立つ存在がいる一方で、左右田のような影みたいな役割がいてこそ、バランスが取れるというのも事実。
どちらが、良い悪いではなく、適性と自分が納得できるスタイルを貫いていれば良いのでしょう。
もしかしたら、知らないところに名探偵は実在するのかも
『左右田に悪役は似合わない』の作品として、謎解き・事件解決のミステリー寄りなのに、主役が、強いキャラクターであくせくしないところがポイントです。
ある意味、どこにでもいそうな地味なベテラン役者さんなのですが、彼が見事に解決しても、誇ることもなく、淡々としている佇まい。
もしかしたら、名探偵というのは、尖った存在ではなく、左右田のような、影の薄そうな人物であっても成立するのかもしれません。
そういう意味で、『左右田に悪役は似合わない』は、ユニークな設定で、気軽に楽しめる作品でした。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。