大規模プロジェクトとして、東京オリンピックの問題について考える

大規模プロジェクトとしてのオリンピック招致・運営と主体責任の問題

先日、講演で1940年の第12回東京オリンピック大会が幻になった(開催返上)という歴史的経緯に関する講演を聞いてきて以来、私の中で、オリンピック開催に向けての企画・準備というものに対する認識が変わり始めています。

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もう少し掘り下げて歴史的背景や意思決定プロセスを知りたいと思い、関連書籍を読んでみました。

幻の東京オリンピック (NHKブックス)』(橋本一夫)


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国際的スポーツの祭典である、オリンピックを招致したいという思いは、ある程度の規模の都市であれば、考えつくイベントです。
大事なポイントとして、運営主体が国際オリンピック委員会(IOC:International Olympic Committee)が、近代オリンピックを主催する団体であり、オリンピックに参加する各種国際スポーツ統括団体を統括する組織であるということが前提になります。

オリンピック招致を望む意志のある都市は、IOCに立候補を申し入れます。IOC総会でIOC委員の投票によって開催都市が決定されます。

必ずしもIOCという組織が公立中正な立場ですべての意思決定ができているのか、という点が大いなる問題です。

IOC委員に対して、招致都市は、いろいろな面でアピールをした結果、一部、過剰な接待的な行動をしているケースもあるのかもしれません。(金銭授受的な買収行為も含む)

国家的イベントであるにも関わらず、運営主体は主催都市が予算を確保しながら実施すると言う点は、開催決定後の予算準備のプロセスでもめるリスクがあるはずです。

2020年の東京オリンピックも当初の予算見積りと、実際のコストに大いなる解離が発生して問題になっています。当初の予算が適切かどうかを誰が判断したのか、明確に見えてきません。

会場を新規で作るコストと、オリンピック後の有効活用に伴う施設活用と維持に関するまで、まともに算出すれば、割の合うイベントではないのでしょう。

1940年の場合、アジア初のオリンピックを開くということに際して、移動手段が限られて欧米各国から反対が多かったことは間違いありません。

一方で、国際社会で認められるには、国際的スポーツイベントである、オリンピックを開催することが必要と考えた東京市長以下の思いも理解できます。

時代背景として、支那事変、日中戦争に向かう日本が、物資不足を考慮して、建築資材やスポーツ道具作りにかかる資材のストップを決めてしまえば、当然、運営はできません。

平和の祭典である、オリンピックを主催する国が戦争中となれば、参加を辞退する国が増えるのも納得できます。(モスクワ五輪の日本辞退などの実績も見れば明らかです)

また、2020年とは状況は異なりますが、開催施設地に関する問題は、事前の段取りが足りずに、開催決定後に確定させようとすると、問題が大きくなります。

1940年であれば、メインスタジアムの問題が課題であり、現在は、ボート競技会場が物議を醸し出しています。

2020年の東京オリンピックのコンセプトがコンパクトな都市での開催であるならば、都内に新規施設を作るのが妥当な考えであり、適切なコストやオリンピック後の施設維持管理、運営が見えていれば問題ありません。

しかし、コスト見積もりの甘さや、施設環境の問題(海に近く風を受ける、交通アクセスが良くない、など)、各種スポーツ団体のパワーバランスと主張、など様々な問題が絡んでいます。

本当に、日本で、東京で2度目のオリンピックをやる理由を、都民や国民、スポーツ団体や選手が熱望してのスタートだったのか、という点が疑問に残ります。

同じ国際イベントでも、サミット等と違い、開催期間や運営に関わる人員も含めて、莫大なスケールになります。

この予算、人員について、事前にコスト負担の末端に関わる個人が理解していたのか、と聞かれれば、答えはノーだと思います。

北京オリンピックでも表に見えない場所で様々な問題があったそうですし、2016年開催のブラジルのリオ・オリンピックも、国民たちは、子供たちの教育費用を削ってまで、オリンピックを開催することに反対をしていた方々も多くいたようです。(開催期間中は、表舞台に立つことがなかったのは、お祭り的要素なのか、意図的に遮断された情報なのか、不明です)

オリンピック開催地立候補から準備・運営まで大規模プロジェクトとして、一環した組織とメンバーが責任を持てればベストです。

実際は、長期間に渡るため、開催地のトップは交代し、運営母体のメンバーも、立候補と誘致活動時と、開催決定後、および、本番運営時では変わってしまいます。

責任の所在の不明確さは日本らしさ

犯人探し的なアプローチは、大好きですが、誰もが、自らの責任を感じることがなく、前任者、後任者も交えた水掛け論になりがちです。

関わる組織が増えて、序列がはっきりしなければ、混乱するのは当然です。

何のために開催するのか、という目的、目標を掲げた個人や組織の意図が、何も理解されないままに進んでしまうからではないでしょうか。

事前にメリットとデメリットという部分を明示してから、招致活動をしなければ、後でもめ事が発生してしまうリスクが高まります。

民主主義的に、ちゃんと国民投票や住民投票で意思を固めた上での、招致活動にしなければ、開催に関わるコスト負担を税金として支払う側も、納得ができない部分は残るでしょう。

イベントやお祭りだから、楽しめればいい。

その通りです。参加すれば楽しいし、人生に1度あれば幸せな国際的な祭典なのは間違いありません。

ただし、他の問題に予算や人を投下しなければいけないような状況を無視してまで、取り組むべきイベントなのかと問われれば、疑問が残ります。

1940年の幻のオリンピックも、2020年の東京オリンピックも、80年の時間差があるのにも関わらず、本質的には何も変わっていない日本の問題を感じます。

現役ビジネスパーソンの皆さんも、社内プロジェクトチームに関わることがあるかと思います。

当初のプロジェクトの目的とゴールを共有して、納得してからスタートしているでしょうか。

計画時点での見積もり工数の甘さはないでしょうか。

絶対にやりきるという覚悟を保てるリーダーはいるでしょうか。

規模の大小に関わらず、プロジェクト運営をする際に、必要な前提条件をまとめあげて、方向性を定めて、プランニングをゴールから逆算して、積み上げることを誰もが意識するべきなのだと、私は考えています。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。