人工透析を止める判断と腎不全患者の緩和ケアの医療問題も深く考える必要がある

災害時に、大きな持病や継続的な治療を受けなければいけない人は本当に大変だと言う話は耳にしたことはないでしょうか?

『透析を止めた日』(堀川恵子・著)を知ったのは偶然ですが、透析患者本人とその家族、医療従事者が何を考えているのかを丹念に掘り下げてくれているので、秀逸なノンフィクションであり、社会への提言も盛り込まれている一冊です。

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病気と戦う夫婦の記録にとどまらない一冊!

病気と戦う夫婦の記録のような本は世の中にたくさんあります。

家族愛と揺れ動く想いに溢れた作品ばかりです。

どうしても、レクイエム(鎮魂歌)的な作品になりがちで、命の問題の本質まで辿り着いているとは言えません。

この『透析を止めた日』は、その点で、秀逸な一冊です。

家族の目線とプロ(ノンフィクション作家・テレビ番組制作者)の記録が交差する

『透析を止めた日』(堀川恵子・著)は、パートナーであった、林新の長期透析患者として、仕事も人生も歩んでいた軌跡を語る前半パートが、当事者の書くノンフィクションとして秀逸です。

淡々と第三者が書くのではなく、当事者である家族の目線から、感情も混じりながら、事実経過を追い続けることで、読む側も、家族の一員のような感覚になります。

林新さんは、難病の影響で血液透析を若くして続ける羽目になった、メディアのプロデューサーでした。

彼のために、老母が自分の腎臓を提供してくれて、生体肝移植を実施したものの、貰い受けた腎臓は機能の限界を迎えて、再度、血液透析に戻ります。

どんどん、弱っていく姿を支える堀川圭子さん、周囲の人々。

特定もしなければ、批判にもならない程度で、当時の主治医や病院のことも語られています。

単純に批判本ならば、特定の誰かを訴えるようなアプローチになるはずですが、こういう事実もあるという客観性を重視している点が、素晴らしいと感じました。

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週3日・4時間拘束される血液透析という患者と家族の負担

人工透析といえば、血液透析を週3日、1回4時間程度の拘束をされて、血液中の余分な水分や老廃物を取り除き、血液をきれいにする働きを腎臓に代わって行う治療法をイメージするのではないでしょうか。

最近、透析専門のクリニックとして、都市部には送迎車付きで、患者を見てくれるところが増えています。

4時間も身体を動かさなければ楽なのか、と勘違いされがちですが、実際は、この時間は相当長く感じるらしく、仕事をしてしながら、本を読みながら、動画を見ながら、居眠りしながら、と過ごせるようですが、動かせない身体というのは苦痛だと言います。

もちろん、体内の血液を短時間で濾過するために、身体への疲れは多いと言われていますが、これは、透析患者が高齢者が増えているから、という理由なのかもしれません。

堀川さんも、林さんを送迎する日々に苦労は多かったと思います。

患者本人が自ら動けるうちは良いものの、体力や健康状態が落ちていくと、ものすごく負担になるのは間違いありません。

その姿も『透析を止めた日』を読むと、自分ごとのように伝わってきます。

自宅療養ができる腹膜透析と地方医療の現場

第一部のパートが当事者目線だったとすると、第二部は、記者の目線として透析の現実、課題、対応などを取材を重ねて掘り下げています。

血液透析であれば、病院に通う必要があるものの、腹膜透析であれば、自宅で自分と家族で対応できるという点は大きな違いだと理解できました。

腹膜炎になるとか、衛生面や機器操作の難しさから、なかなか日本では広まっていないようですが、海外では、自宅療養につながる腹膜透析は利用度が高いようです。

つまり、血液透析の方が、医療機関が儲かる仕組みがあるという前提で設計されており、患者目線で捉えられていないことが理解できる内容です。

一方で、地方現場の事例を見ると、医師と看護師が自宅を訪問することで、移動の負担はあるものの、患者ファーストになっているのは明らかです。

一方で、志がなければ、通常の医師、医療から見ると負担が大きいと感じてしまうだけに、なかなか広がらないのも事実だと思います。

誰のための、医療なのか、治療なのか、この点を透析の現実を知ることで気づけました。

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緩和ケアはがん患者しか対象とみなされていないという話

透析患者も、腎不全や糖尿病の合併症による壊疽による足先の切断などもあり、つらい日々を送らなければならず、痛みを踏まえると、緩和ケアで補うべきだと誰もが感じるのではないでしょうか。

ところが、日本の緩和ケアは、がん患者とエイズ患者だけに限定されており、透析患者は対象外のため、緩和ケアという観点がないという事実を知らされる一冊です。

透析を止めてしまえば、命がないという状況ではあるものの、耐えられないような痛みを抱えても、無理やり血液透析をやるべきなのか、痛みを緩和することが、医師の事情(忙しさ、命を救うことが最優先)があって成り立たないとしたら、患者や家族は、ぶつけられない想いに苦しめられているのではないかと想像できます。

緩和ケアとして、苦しまないエンディングを考えてあげることは人間の死に向かうときには不可欠なのではないかと考えさせられました。

人生のエンディングは自分で選択できるのかどうか

人間は生まれてくること、死ぬタイミングは、本人の意思ではコントロールできないものだと言われています。(自死と日本が認めていない安楽死を除く)

タイミングではなく、どういう形で自分の人生のエンディングを迎えるべきなのかは、誰が選択するべきことなのかと問う必要はあります。

本人の意識、判断力があれば、自己判断をしたいでしょう。

それ以外であれば、家族、医療関係者の判断に任せるしかありません。

じわじわと広まっているエンディングノートにも、自分の残した家族へのメッセージを大切にするのは当然のこととなっていますが、自分が、どんな人生の終わり方を迎えたいのか、までを明確に書いている人は少ないでしょう。

自分の臓器を提供するか、検体するか、を決める程度であって、それは死後の話で、死の直前について、自分が何を大切にしたいのかをしっかりと話し合い、決めておくことが、世の中に広まってほしいと考えます。

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安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。