読解力には人によって差が出るものという認識はありますか?
話題になった『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子・著)を読んで以来、読解力とは一体どのようなもので、判別がつくのかどうか、という疑問を持っていました。
子どもたちに限らず、読解力がない大人もいますし、自分自身の読解力に自信があると断言もできない。
今回、作家・佐藤優さんが学生たちに『塩狩峠 (新潮文庫)』をもとに読解力の授業を行った内容をまとめた本『未来を生きるための読解力の強化書』を読書会の課題本として読んでみました。
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強面の官僚イメージが強い佐藤優さんが子どもたちに授業をする光景
元・外務省の強面の官僚イメージが強い佐藤優さん。
外交政策や政治・社会について語る姿を見ていただけに、とても、学生相手に読解力の授業をするタイプには見えません。
彼が同志社大学神学部出身という知られていないバックボーンを知ると、なぜ、『塩狩峠 (新潮文庫)』(三浦綾子・著)という作品を取り上げて、あの学校の生徒たちに授業を行ったのかの謎が解けます。
答えが1つではないのが読解力の醍醐味
現代の学生に、『塩狩峠 (新潮文庫)』を読んで理解してもらおうというのはハードルが高いと言わざるえません。
彼らにとって、明治の時代背景と当時の人物たちの考え方などは、想像の範疇を超えている可能性がありますから。
ただし、キリスト教というキーワードがあることで、学生たちも、佐藤優さんも共通のつながりを持てたことにより、読解力の授業が成り立っています。
一番大切なことは、受験的な発想で、たった1つの正解を導くことが読解力ではないということです。
立場や見方によって、感じること、考えることはまちまちであって構わない。
何が正しいのか、間違ってるのか、ですら個人差があって問題ないというスタンスにあります。
読解力は、受験にだけ必要な武器ではなく、人間が物事を理解する上で不可欠な力の1つと考える大切さを私は理解できました。
理解や解釈のポイントは違って当然だから
正解、不正解ではなく、1つの小説の結末に際して、何を考えて、感じるのかを言葉にしてみるというのは、自己理解も他者理解にもつながります。
勧善懲悪なストーリーであれば、正義が悪を倒すというシンプルなもので、誰もが賛同しやすいものです。
ただ、世の中は、そこまでシンプルではなく、良い部分も悪い部分もあるもので、どこに着眼点を持って考えるかによって、導き出せるものに差が出ます。
この読解力を自分を信じるだけでなく、第三者はどう捉えるのか、その違いは何か、まで掘り下げていく機会があれば、目の前の事象を1つの切り口からだけ伝わる話を盲信してしまうという問題から逃れられるのです。
社会的な事件・事故があっても、原因と結果、加害・被害、という単純な二項対立ではない、モノの見方、考え方ができるのか、という部分が人間の深みに影響を与えているのです。
童話や昔話のことを考えてみる
例えば、『マッチ売りの少女 (こども世界名作童話)』を題材に考えてみましょう。
少女のマッチを買ってくれない街を歩く人々(大人)が買ってあげれば、彼女の人生は変わったのに、ということで、世間の人は困っている人に無関心だという考えを持つ人がいます。
マッチだけでなく、他のもの(タバコなど)と一緒にセット販売すれば売れたはずなのに、というビジネス感覚で感想を持つという人もいます。
そもそも、彼女がマッチを売り歩くしかない人生を歩ませた、親に問題があるという、家族・親戚への不満を抱く人もいます。
ストーリーから考えれば、どんな感想・解釈を抱いても個人の自由なのです。
大事なのは、目の前の読んだ世界から何を自分が考えるのかという点だと理解できますか。
読解力は深く考えて多面的に理解して、自分自身のスタンスを磨くもの
今回、読書会の課題本として『未来を生きるための読解力の強化書か』を選ばれて、タイトルの「強化書」という部分がひっかかっていました。
「教科書」と謳う本は多いものの「強化書」というものはほとんどありません。(トレーニング本ならありえますが)
つまり、教科書としてのお手本を示したいのではなく、個人にとって、読解力を鍛える、磨くことを求めている本だったということです。
この本を読む前に、参考本として『塩狩峠 (新潮文庫)』を読み、授業に参加した学生たちと同じ気持ちで、読み進めていくうちに、大事なポイントに思いが至りました。
当たり前の無難な感想をまとめるのではなく、批判的な視座で読んで、自らの主張を持っても構わないという、冷静に考えてみれば当たり前のことを、私たちは忘れてしまっている現実に気付かされました。
少数派であったり、異端に思える切り口を語る人の考えを受け入れないとしがちではないでしょうか。
もしくは、誰か特定の人の考え・主張を理解もせず盲信していないでしょうか。
自らが深く考えてみて、その内容を理解してみる。
人間として当たり前のことを丁寧に行う必要性を学べる一冊でした。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。