なぜ、『白鳥とコウモリ』(東野圭吾/著)というタイトルなのか最後まで考えてました

世代を超えて残されてしまうものと、絡み合う関係性を描くスタイルで東野圭吾は『白鳥とコウモリ』を仕上げたのではないかと感じています。(読了直後の感想)

果たして、被害者と加害者の関係性をどう捉えるべきなのか、改めて考えさせられる作品です。

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ネタバレはしたくないので、最後まで読み切って欲しい!

小説のレビューを書こうとすると、ストーリーを語りすぎると興味が失せるし、ネタバレは厳禁だと思うと書ける内容は限られてしまいます。

ただ、見事に登場人物が絡んでいく展開力、この作品の主人公は誰で、何が悪かったのか、などと考えさせられるところが、東野圭吾の単発作品の良さです。

シリーズものを書きながらも、新作を世に出し続けられるのは素晴らしい。

大作ではありますが、是非、最後まで読み切って欲しい一冊です。

被害者と加害者、その家族は傷を残し続けて生きていく

『白鳥とコウモリ』の中で登場人物は、事件を捜査する刑事、裁判に向かう弁護士、そして、被害者の遺族や、加害者の家族という関係者の姿を丁寧に描いています。

究極的な悪人は1名出てきますが、彼を裁くのが法律ではなく、殺害という行為だったという点は、最後まで心に残ります。

ストーリーとしては、殺人容疑を認めた被告人を裁判によって、早く決着をつけてしまいたい側の人間と、もやもやした思いを自ら調べて、謎を解いていこうとする事件関係者の二軸がなんとも言えない深みを出しています。

真実が隠されても、ケリをつけたい側と、納得できない側の関係性の中で、後者に被害者家族も加害者家族という本来の対立者が関わって展開していくのは意外性を感じます。

後半に進めば進むほど、目の前で起きた事件の背景は、はるか昔に起きた事件関係者の延長戦であるという、ある意味、こじつけとも言える要素が興味をそそりました。

被害者も加害者も晒され、叩かれる世の中だから

被害者と加害者って、本来、対立関係にすぎないものです。

被害者は悔やまれ、加害者は叩かれる。

そんな単純な世の中ではなく、被害者と加害者当事者だけでなく、その家族まで巻き込んで、世間に晒されて、叩かれる時代(SNSを中心としたネットの誹謗中傷)という要素も盛り込んでいます。

調べれば、色々な過去や問題は出てくる人がいるでしょうし、解釈と伝え方次第で、真意と変わる情報が展開され拡散されていくものです。

気がつけば、実像と違うイメージだけが固定化されるのは、頻出していると感じないでしょうか。

傍観者やコメントを拡散する側は、悪意はありません。

おそらく、野次馬的なものであって、興味も関心も一過性のものに過ぎません。

その代わり、1対多で叩かれた側の人間たちは傷つきます。

おそらく、そこにあるのは無責任なまま、生きかれる日本人の本質とも言えるのではないでしょうか。

仕事も家庭も、全て失うという恐怖について

事件に巻き込まれた結果、仕事も、家庭も全て失い、人生が苦しくなるという話は、山ほど出てきます。

忘れてはいけないのは、被害者家族の粗探しをしたり、加害者家族を悪人DNAのように叩きまくることで、優越感に浸ってしまう、一般の無名の人々なのです。

自分が一歩間違えば、事件関係者としてダメージを浴びる可能性があるのに、傍観者なままであれば、容赦無く、正義を振りかざしたり、誰かの意見に乗って、便乗的に人を叩く行為にのめり込む気持ち悪さ。

これららの誹謗中傷によって、名誉毀損などで訴えるとしても、対象者が特定しきれなかったり、事件性を持って取り扱わないことで、軽微なものと見られがちです。

『白鳥とコウモリ』を読んでいると、当事者の孫という三世代後であっても、あれこれ調べられてしまうという複雑さを感じます。

自分の家系を徹底的に遡れる方法があった場合、誰一人として問題を起こさなかったと言える人の方が少ないはずなのに、この他人事に向けて、正義の鉄槌、批判で叩く行為は本当に良くないものです。

完全決着で大満足できないことで、余韻を残す

『白鳥とコウモリ』は、ミステリー領域ですから、犯人が後半になるまで分からないというのは、読者としてワクワクドキドキできる、良い作品です。

一方で、果たして、このゴールで良かったのか、という余韻も残ります。

完全決着したようで、何か釈然としない気持ちが残ったり、誰もがハッピーエンドになるわけではないのが、東野圭吾作品のエンディングだと捉えています。

つまり、立場や状況によって、人の判断や行動なんて変わってしまうもので、綺麗に正義・不正義のように、二分割できないこともあるわけです。

もし、自分がこの作品の中で、誰々の立場だったら、と考えてみることができる、余韻を残せるのが、東野圭吾作品の良さだと思います。

個人的には、犯人と動機って、ストーリー全体との関わり合い方が薄いように感じました。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。