2019年に行われた金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書として、「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表されたインパクトは、いまだに老後の資産に関する不安として、多くの人の胸に刺さった情報です。
世の中の風潮は、この不安を煽られて、資産作り、何歳までも稼ぎ続けるというロジックに流れています。
ところが、『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (光文社新書)』を読んで、色々と頭の中を整理するきっかけをいただけました。
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お金を子孫に残さず、終焉までに使い切るという考え方
資産を残す相手の数は、少子化、おひとり様(独身で生きる方)も増えているので、減っているのは間違いありません。
残す相手もいないならば、気兼ねなく、人生の終焉までに資産(お金)は使い切ってしまえばいいという考え方を主張されている、大江さんの本を読むまでもなく、理解できる話ではあります。
ただ、昨今、この考え方以外の、資産を減らさないで人生の最後まで過ごしていこうというスタンスの話が多すぎるから、異端に感じてしまうのでしょう。
90歳まで健康で動けるうちにお金を使い切ってしまえばいいじゃない!というスタンス
人生100年時代と言われて久しく、健康状態はわからないものの、長生きすることが前提になりつつある社会の中で、生活を考えると資産(お金)への不安は尽きないものです。
貯金や退職金、年金だけでは暮らしていけないから、高齢者になっても働かなきゃいけない。
こんな義務的な残酷なイメージが頭の中にあると、どう考えても、ハッピーになれません。
著者の大江さんは、90歳まで健康で動けるうちに、好きなことをやって、お金を使い切って仕舞えばいいじゃない!というスタンスで語りかけます。
老後2000万問題が提起されてから、この問題を解決するために、資産運用をして備えようとか、一生涯現役で働ける道を見つけよう、といった話が多くて、明るい未来としての老後は想像ができなくなっています。
ただ、身体が動いて自由が利くならば、自分が好きなことに時間と、お金を使ってしまえば、余計なストレスを溜めずに過ごせる、と言われてみれば納得できます。
大江英樹さんは、野村証券で長年働いた成功者だから言える話
老後資産がいくらあるか、減らさないことに意識を向けるのではなく、ある資産を使い切るという考え方には、驚かされます。
ここで大事なのは、大江さんは野村証券で定年まで働いたのだから、資産をたくさん持っているし、独立後も成功している成功者だから言える話なのではないかと。
現役世代の時に、給与がそれほどもらえない方々(中小企業の方が中心)にしてみたら、持っているお金を90歳までに使い切ってしまえばいい、は絵空事に感じるはず。
資産をたくさん持っている側の存在と、ほとんど持っていない人からすれば、余裕がない老後生活を見越すと、不安に襲われるだけでしょう。
生活水準を下げ続けて、ギリギリの生活をしてまで生きていたいのか、と問われたら疑問が残るはず。
健康不安とお金に対する心配が自殺の要因の上位を占めることから考えても、大江さんの立花ら言えるよね、とカウンタートークをしたくなる人が多いのではないでしょうか。
相続人がいなければ国庫に財産が渡るだけ
遺産の相続人がいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことがわかったというニュースを思い出しました。
結局、資産を溜め込んで、誰にも相続させることもなく、国庫に収めるのだとしたら、なんのために、節約をしたり、溜め込んでいたのでしょうか。
もちろん、慈善団体への寄付とか、他の方法も含めて有効に使うゴールを設定している人もいるのかもしれませんが、あまり聞かない話です。
国としては、国庫に入るので喜ぶかもしれませんが、これほどの遺産額にしないで、使い切る方向で暮らす人が増えたほうが幸せな老後、余生なのだと言われてしまうと、うなづくしかありません。
人生後半の不安を抱えて、資産を残すよりも、好きなことに使って生きるという道
コスパ重視の考え方をやめて、時間、信用、健康、幸福感などを大切にしないといけないという、大江さんの結論について、Noという人はいないと思います。
ただ、本当の意味で資産(お金)がなくなっていたとしたら、どんな顛末の人生が待っているのか、公共の福祉で救われる限界というものがあるのは事実。
人生の後半に、不安や心配を多く抱えるよりも、どうやったら楽しく過ごせるのか、他人の目線や考え方ではなく、自分らしく過ごして、エンディングを迎えるにはどうすればいいのか。
ライフプランっていうのは、いつでも、何度でも見直しながら、考えていく必要があると感じました。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。