朝井リョウが早稲田大学在学中に、第22回小説すばる新人賞を受賞した作品が『桐島、部活辞めるってよ』であり、この作品が2012年に映画化されました。
タイトルにある桐島がキーマンなのに、桐島が一度も出てこないで伝聞だけ。
この設定こそが、原作からのミソなのだ。
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部活は入部したから引退まで在籍する義理はない
中高の部活、大学のサークルなどは、あくまで仲間と楽しく過ごすための集いであって、入部(参加)したからといって、引退(卒業)まで在籍しなければいけないと言うルール、義理は存在しないものだとは誰だってわかっています。
ただ、男子バレーボール部のキャプテンで、クラス一の人気者だった桐島が辞めると言うのは学校内ではニュースになる話であり、彼が学校に来ないと言うのも不可思議で、周りが騒ぐのも納得できます。
映画「桐島、部活やめるってよ」は、当時の若手俳優(10代〜20代前半)が集まり、魅力的な面々が一つの学校でのエピソードを紡ぐ作品です。
桐島が学校の人気者だからこそ、周囲が騒ぐのは仕方ない
朝井リョウの原作が見事だったのは、「桐島」を一度も登場させなかったことにあります。
脇役ではなく、話題の中心人物「桐島」の概要は分かっても、なぜ、彼がバレー部を辞めるのか、どうして学校に登校していないのか、などは何もわからないままなのですから。
桐島の友人も彼女も、バレー部の仲間もソワソワするのは仕方ないとしても、直接、接点がないような面々までストーリーには関わってきます。
学校は主役一人が存在するのではなく、学生(職員も含めて)が集まった場所であり、それぞれの日常が存在するのは言うまでもありません。
学校には誰もが知る人気者が存在する
「桐島」のキャラクターを勝手に想像しやすいのは、誰もが学校内での人気者だった人物のことをうっすらと印象に残しているからに違いありません。
ビジュアルなのか、能力(スポーツ、成績など)なのか、キャラクターなのか、いずれが突出していたり、目立っている人物。
そのまま、スターになって社会に出るものもいれば、当時の狭い世界の中だけで脚光を浴びたのかもしれませんが、「桐島」のような存在はいたはずです。
主役キャラのようで姿を見せない存在で原作を書いた朝井リョウのセンスが素晴らしいといえばそれまでなのですが。
私は人気者ではなく、認知者だった
私自身は、学生時代(主に中高生)を振り返ると、人気者だったとは思っていません。
ただ、認知者だったと思います。
変わった部活にのめり込む、「丸い体型の声の大きな男」って、一度キャラクターとして認知すれば、詳しくは知らないけど、存在は知っているということになります。
だから、私は、人気者ではなく、認知者でした。
相手のことを知らなくても、相手は私をなんとなく(実際は何も知らないけど)知っていると言う不可思議な関係でした。
桐島とは違うキャラクターだったと自認しています。
結局、桐島はなぜ部活を辞めたのだろうか?
映画「桐島、部活やめるってよ」では、結局、桐島はなぜ部活を辞めるに至ったのかは、何もわからないままでエンディングを迎えています。(原作でも同様)
最近の謎をラストで回収して、満足させるシナリオとは異なり、大事な部分は視聴者や読者の想像力に委ねてしまうというの上手いと言わざる得ない設定です。
バレーボールに飽きたのか、怪我や病気なのか、人間関係に疲れたのか、家庭の問題か、何もわからないまま、エンディングを迎えます。
私たちは、謎や真実を知ろうとしすぎていますが、本当は、何もわからないものに囲まれて生きているのかもしれません。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。