２０２０年２月、大黒ふ頭に留められた豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の話。
日本に、未知のウィルスである新型コロナウィルスを瀬戸際で止めようとした医療従事者と関係者、乗船客とクルー、報道と一般人の目線について、綿密な取材に基づいて書かれたストーリー『フロントライン』（増本淳・著）を読んで考えてみました。
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やれることは全部やる。命のために
災害派遣医療チームDMAT（Disaster Medical Assistance Team）は、
厚労省の要請を受け、ダイヤモンド・プリンセス号へと乗り込んだ。
乗客の命と、日本の安全を守るために――。
日本に新型コロナウィルスを持ち込ませないために、水際対策として、最前線で格闘した医療従事者たちは、DMATです。
ただ、彼らは、感染症の専門家でもなければ、本来は勤務先の病院がある、医師、看護師などのスタッフ。
勇気と善意を持って、困難な時に手を差し伸べようという彼らが、挑んだ現実、わからない相手との戦い。
そんな彼らの思いは、「やれることは全部やる。命のために」だったという。
傍観者は無責任に恐れ、当事者は命の危機に恐怖を感じた
突然、ニュースになってきた、中国で発症し始めた、新型コロナウィルス（Covid-19)。
当初は地域限定の病気であり、日本に影響を与えたり、世界全体を巻き込むほどの恐ろしいウィルスだとは誰もが想像していなかったのではないでしょうか。
「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で新型コロナウィルス感染者が出て、対策もままならぬまま、横浜にやってきたという時点で、物語は始まります。
ニュースや報道、ネットの情報により、傍観者である、我々は注目をしたものの、真実を理解せずに、右往左往していました。
政府、厚労省、横浜市などの対策、そして、現場に物々しい防護服で乗り込んでいくDMAT。
DMATであれ、乗船中の方々、乗客やクルーたちも、新型コロナウィルスについて知識も情報も足りない、対策が取れない、わからない中、格闘していたという真実。
報道の映像を見て、もしくは、正しくない情報を元に、関係者をバイ菌を扱うように揶揄した一般人。
誰もが、見えない恐怖と戦うリアルな世界なのに、立ち位置によって、感覚が違っていたと思い知らされました。
まるで、クライシスな映画のような展開＝映画化されたのも納得
ドラマ・映画の脚本家であり、プロデューサーでもある、増本淳さんが丁寧に取材を重ね、真実に近い形で練り上げた一冊だけに、差し迫る問題、感情などが伝わってきます。
自分自身も当時を思い出しながら、読んでいましたが、明らかにクライシスな映画のような展開。
２０２５年６月１３日から映画公開となったのも納得できます。
この物語をシナリオとして読むだけでなく、一流どころの役者陣が演じてくれることで、説得力は、さらに高まるのでしょう。
最前線で奮闘した彼らの美談だけではなく、わからないからこそ、誤った情報に飛びつく、報道・一般市民の目線。
双方を丁寧に描いています。
豪華客船への憧れは消えかけた
将来、老後の人生を迎えたら豪華客船で世界一周をしてみたい。
私自身、こんな漠然とした夢、贅沢を胸に描いたことがあります。
明らかに高額な経験ですが、船内も海外旅行も、非日常の連続のはず。
明確なプランまでは立てていませんから、憧れみたいな願望です。
ところが、この「ダイヤモンド・プリンセス号」の事件によって、乗客の安全・安心を担保することの難しさ、何かあったときに、自分はパニックにならないのか、という不安が大きくなりました。
当然、コロナウィルス蔓延時は、豪華客船に乗りたいなんていう思いは消えかけました。
でも、『フロントライン』のクルーの奮闘ぶりを見ると、この願望は戻ってきたと感じます。
医療従事者も市民の一人に変わらない！
当時、医療従事者（エッセンシャルワーカー）へのリスペクトを促すようなキャンペーンみたいな動きがありました。
それだけ、フロントで戦う彼らに、言われなきバッシング・阻害が起きていたという事実。
人の健康と命を救うために、全力を注ぐ医療従事者が、まるで感染源、媒介者であるような形で距離を置こうとした一般人。
医療従事者といっても、仕事を離れたら市民の一人に変わらないのに。
彼らだって、恐怖もあれば、家族への心配も抱えていて、自らの使命感で立ち向かっていた存在なのに。
単純に誰かを批判する内容ではなく、史実の一点を掘り下げた物語として『フロントライン』は読む価値はあります。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー（主宰者）。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える！サードプレイス・メルマガ」（まぐまぐ）の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。
