もし明日、急に重い病気になったら──
見えない未来に立ち向かうすべての人に。

読書会の本として選ばれた『急に具合が悪くなる』を読み終えました。
全く事前情報のないまま、読み始めて、二人の関係性がどういうものなのか、最初はわからなかったのですが、後半に行くと、短期間でありながら濃密であったことが理解できます。
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この本は映画化もされてる!
この本『急に具合が悪くなる』は、濱口竜介監督 最新作 映画『急に具合が悪くなる』として、2026年6月19日全国公開され、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品決定!
二人の設定は変わっているものの、「急に具合が悪くなる」というベースは一緒です。
映画のあらすじは下記の通りなので、舞台も設定も違います、ただ「急に具合が悪くなる」というコアな部分は共通しています。
パリ郊外の介護施設「⾃由の庭」の施設長であるマリー=ルー・フォンテーヌは⼊居者を⼈間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、マリー=ルーは森崎真理という日本人の演出家に出会う。がん闘病中の真理が演出するのは、自閉スペクトラム症の孫・智樹と行動を共にする俳優・清宮吾朗の一人芝居。真理の描く演劇に勇気をもらったマリー=ルー。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、二人の交流が始まる。しかし、あるとき真理は「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、二人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる⋯⋯。
映画は見ていませんが、本に集中して読み切りました。
哲学者と人類学者の間で交わされる「病」をめぐる言葉のやりとり(往復書簡)
当初は二人の関係は長年の友人であったと思ったのですが、読み進めていくと、二人の出会いからこの往復書簡のやりとりという期間の短さに驚かされます。
共通点が多かったことで、20年の学問キャリアを持つ二人だからこそ、語り合える要素が文字として残っている点が印象深いものになりました。
ところどころ、学者さんらしい言葉遣いに、戸惑うことはありますが、お互いのことをリスペクトしながら、キャッチボールをしている姿を覗けていることに気付かされます。
死に向かう人と、その相手と向き合う人はどんな言葉を投げかけていくものなのか。
分野の違う学者同士がどんなやりとりを続けるのか、下記の目次の10便を読み込むと、色々と考えさせられます。
目次
1便:急に具合が悪くなる
2便:何がいまを照らすのか
3便:四連敗と代替療法
4便:周造さん
5便:不運と妖術
6便:転換とか、飛躍とか
7便:「お大事に」が使えない
8便:エースの仕事
9便:世界を抜けてラインを描け!
10便:ほんとうに、急に具合が悪くなる
往復書簡が10便を短期間でやりとりをしています。
二人の著者について
宮野真生子(みやの・まきこ)
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。専門は日本哲学史。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか──「出会い」と「恋愛」の近代日本精神史』(ナカニシヤ出版)、『出逢いのあわい──九鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理』(堀之内出版)、藤田尚志との共編著に『愛・性・家族の哲学』(全3巻、ナカニシヤ出版)などがある。
2019年7月22日、多発性がんにより逝去。42歳没。
磯野真穂(いその・まほ)
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人類学。 著書に『なぜふつうに食べられないのか──拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界──いのちの守り人の人類学』(ちくま新書)、『ダイエット幻想──やせること、愛されること』(ちくまプリマ―新書)などがある。
ほぼ同年代の二人の女性学者であり、名前に「野」「真」という文字が入っていることなど共通点が多い。
誰もが死への道を歩んでいるという事実からは目を背けられない
二人は、普通に、LINEのやり取りもしながら、この往復書簡を残したことに意味があると感じます。
磯野さんに去来する思いは何なのでしょうか。
この本が評価される一方で、すでに他界された宮野さんへの想いをどのように消化しているのか、本音の部分を聞きたくなります。
冷静にこのやりとりを読み込むと、人間(生物)は生まれた日から、1日1日死に向かって進んでいるという冷たい事実を無視できなくなります。
まだ、突然、この世からいなくなるよりは、具合が悪いというステップを知れるだけ、少しだけ猶予があるのかもしれません。
年々、誕生も見るが、見送ることも増えてきた人間として
私自身、シニア層の年齢に入ったことで、自分の上の世代が亡くなることは増えました。
近所に住んでいた人、恩師、有名人・著名人など幅広く、当然、家族・親戚、友人という存在も含まれます。
一人一人のことを思うのは一瞬のこともあれば、ずっと心に引っ掛かることもあります。
ミドル世代の頃は、家族ができて、子どもが生まれて、という広がりがある、大変な日々と比べると、大きく変わりつつあると感じます。
それは、他者が亡くなることと同時に、自分自身の寿命がいつまであるのか、わからないし、自分だって、「急に具合が悪くなる」ことで、人生の後始末を考えなければいけない時が、いつ訪れるのかがわかりません。
あえて、往復書簡という形で残した意味を考える
二人の往復書簡のやり取りは、テンポよく続きます。
その中でお互いのことを知り、理解も進み、苦悩も見え隠れするような内容も含まれます。
メール(実際はどんなツールを使ったのかはわかりません)や、動画(二人の時間を合わせて対談をするような)ではなく、文字に残した意図は何なのか。
この点について、編集者・出版側の思惑も理解しつつ、本来は二人の間でのやり取りを、オープンにしてしまうのって、タブーな部分も感じます。
往復書簡がラブレターだったとしてら、創作でないとしたら、恥ずかしいし、他人に読んでもらいたいという前提にはならないはずです。
最後まで読んで改めて考えると、二人の出会いと別れの期間の長さではなく、シンパシーがあった部分を形に残せたことの意味を考えさせられます。
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投稿者プロフィール

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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。



