先日、法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴さんにお声をかけていただき、第8回の「越境オープンラボ」に参加してきました。
パラレルキャリアについて調べていた頃、石山さんの本を読み、直接お会いして、考え方に刺激を受けて理解を進めてきました。
副業やパラレルキャリア、越境学習などについて多くの参加者と一緒に学んだことを報告します。
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「越境学習」って何だろう?
「越境学習」とは、ビジネスパーソンが所属する組織の枠を自発的に“越境”し、自らの職場以外に学びの場を求めることを意味します。企業内研修とも、自宅での個人学習とも異なる“サードプレイス”での学びと知的交流を重視することが越境学習の特徴で、働きながら社会人大学や民間のビジネススクールに通ったり、社外の勉強会やワークショップに参加したり、具体的な選択肢は多岐にわたります。組織の外に出て学ぶことは、異質な他者や知見による触発を促し、その経験が結果として、本人のキャリア開発や組織のイノベーションにまでつながると期待されています。(2012/12/10掲載)
<日本の人事部 人事キーワード>越境学習 より>
自らのホームでないところで学びの場を求めるという点が最大の特徴。
つまり、社内研修や職能に関する資格取得などではない学習という点がポイントです。
イメージとしては、ビジネスマンとして働きながら、社会人大学院・ビジネススクールに通うというのがスタンダードなスタイルです。
日頃とは異質なものを学び、刺激を受けることで、ホーム(本業)への新しい刺激、変化をもたらすことができる学習の仕方、イノベーションの起こし方とされています。
「越境学習」って素晴らしい、では済まされない問題
では、「越境学習」って素晴らしいと賞賛して、誰もが喜ぶべき活動なのか、と問われるといくつかの問題が生じます。
1.既存のホーム組織との壁
2.越境したことで受ける迫害
3.そもそも越境学習は、ホーム組織(本業のビジネス)のため?自分個人のため?
1.既存のホーム組織との壁
越境学習をするには、既存のホーム組織、企業や団体の活動以外に、学びの時間、交流を求めるのはことになります。
一方で、ホーム組織に所属する側は、残業も飲み会も含めて、長時間、己のルールや事業に特化しています。
自由なことをやらせてもらえる環境に身を置けるのかどうか。
このホームの壁、固定概念的なものから飛び出るには何が必要になるのでしょうか。
おそらく、現状に対する「不」に関する気持ちがベースになっています。
「不満」「不安」「不足」など、何か、このままではいけない、ここから抜け出したいという気持ちから行動に移れるか、移れないのか、というラインが一番最初に存在する大きな壁です。
なぜなら、普通の日本人、今までのステレオタイプなビジネスマンは、この「不」の部分を感じても我慢したり、諦めるということで、やり過ごしてきたからです。
最近までは、年功序列制度や、終身雇用という長期安定の仕組みに支えられてきました。
壁を乗り越える、立ち止まるという個人の差はどこにあるのでしょうか。
2.越境したことで受ける迫害
では、実際に越境した人はどう変わっていくのでしょうか。
今まで知らなかった世界、知識などを得て、思考も行動も変わろうとします。
これは、黒船来航で時代の変化を感じた、幕末の志士の話を例に挙げれば、理解できます。
彼らは、今までの江戸時代の士農工商や幕藩体制という当たり前の価値観が壊れることを肌に感じて、志士として活動を始めます。
自分の所属していた藩を脱藩して、多様な交流と活動を続けて進化していきました。
当然、元の仲間たちから見れば、変節漢、裏切り者、という目で見られたのは日本の幕末史が好きな方であれば、すぐに理解できる話です。
志士たちは大半の人たちから理解されず、異端者として迫害されていくのは言うまでもありません。
現在も、社会人大学院やビジネススクールで学ぼうと言う志を掲げて、頑張ってきた個人が自分の組織に還元しようとすると、軋轢が生まれて、うまくいかないと言う話は耳にします。
越境学習者は、ムラの掟やルールを無視した存在なので、仲間内から迫害をされる、陰口を叩かれる、認められないというケースは、実際に多いと言われています。
1つには、越境した感覚が理解できないこと。もう1つには、越境への憧れとやっかみの混ざった複雑な思いがベースに存在しています。
3.そもそも越境学習は、ホーム組織(本業のビジネス)のため?自分個人のため?
当日の越境オープンラボでお話をしてくれた磯村幸太さんの研究発表を参加者で聴きながら、誰もが疑問に感じた部分です。
越境学習って、ホーム組織に還元しないといけないものなのか?
八の字を書いて、ビジネス現場の実践と知識学習などを八の字のように展開することはキレイに見えるものの、迫害されるという現状を考えたら、還元することは必要なのでしょうか。
ここが、今回の越境学習のテーマで参加者同士のディスカッションの中で、私が強く印象に残った部分でした。
結論としては、私は、還元できるものはあるが、押し付けてはいけない。あくまで、周りを促して、理解を緩やかに進めながらのイノベーションでなければスムーズに展開できないと考えます。
理由としては、アカデミックな学習をすると専門用語や概念が出てきます。また、フレームワークなども含めて、幅広い知見と知識を周囲から受けて、目覚めていきます。
そのまま、還元すれば、現場のビジネスの常識や慣習とはギャップが大きいため、すんなりとは受け入れることは不可能なのです。
もし、取り入れることができるとしたら、かなりの時間をかけるか、思考が柔軟で、行動力がある、新しい考えやアプローチにすんなり馴染めるようなメンバーが主体の組織でなければ成功できません。
ただ、これはレアケースです。
だからこそ、今の時代は、個人の変化・多様性が重要なので、越境学習によって得られたものは、個人>ホーム(既存のビジネスの所属組織)と捉えるのが正解だと、私は考えます。
ナレッジブローカー(知識の仲介者)として、サードプレイスを作りたい
私も、今まで、人生を拡張(Expand)していきたい、多くの人の背中を押して、一歩前に出るサポート、きっかけづくりをしたいと考えて、サードプレイスを勧める活動全般を実践してきました。
まだまだ、ナレッジブローカーに成り切れてはいませんし、専門特化した理論が存在している訳ではありません。
ベースになる知識は理論的であることも必要ですが、言葉や概念に縛られすぎると自由がなくなり、面白くなくなります。
サードプレイス・ラボで様々なテーマでゲストをお呼びして、話を聞いたり、メンバーを固定したサークルではなく、緩やかな参加メンバーにしているのは、一期一会の中に、瞬間の楽しさと、その先の方向性は個人によって異なって当然だと考えているからなのです。
「海賊王に、おれはなる!」
少年ルフィの言葉が印象深い、人気漫画『ワンピース』をご存知でしょうか。
彼は、ものすごい強い組織、鉄の掟などは作っていません。ある意味、一緒にいるメンバーは自由です。
ただ、彼らは目指すゴールに向かって、それぞれの役割を果たしながら、緩やかに繋がっています。
家庭と職場の2点だけで必死に生きる人生なんて、つまらなくなるじゃない!!
だから、第3の居心地の良い居場所、仲間、コミュニティ、なんでもいいから、参加しながら、自分も変化・成長を遂げればいいじゃない。
緩やかな仲間は命令も指示もしないけど、ヒントとアドバイス、人や知識を紹介してくれる。
1つの組織に依存しなくてもいい、複数のグループの中で自由に動いても構わない。
出入りも自由。
結果として、関わってくれた全ての人が、個人として楽しく納得できる人生を歩んでいって欲しいし、自分もそうありたい。
私は、人脈のハブ・中継点であること、誰かに真似されたり、インスパイヤできるものを与えられる人であり続けたいと考えています。
そのために、1つのことを突き詰めるだけの生き方ではなく、多様性のある時代を、自由に伸びやかに生きていくこと、我慢をしないで過ごせる日々を送りたい。
そのためには、自分がサードプレイスの旗を掲げて、より多くの人にメッセージを伝えて行こうと決めています。
月1回のサードプレイス・ラボでも、週刊のサードプレイス・メルマガでも、Facebookのページやグループでも、このブログでも。もちろん、他の興味があるイベントやご紹介で会えた方とのつながりを大切にしています。
私のナレッジブローカーとしては、誰にだってできる、一歩踏み出してチャレンジする姿勢や活動の一部を見せてあげて、広めていくこと。
もちろん、ビジネス(本業)に還元したって構いません。無理に、そこにゴールを置かなければ、いつか、何かの知識、人脈などから素晴らしいアイデア、イノベーションが起きるかもしれないので。
※ 越境オープン・ラボについて
石山ゼミの現役生・卒業生とゼミ以外の方々が研究をテーマに交流するサブゼミであり、対話の場として、このグループをつくりました。月に一回ほど、気が向いた人が集まる、ゆるい学びの場。
あくまでも任意な緩やかなつながりですので、参加してみたいと言う方は、私経由で石山さんにご連絡を取ることもできますし、ダイレクトに連絡をしてもらっても構いません。
「越境学習」関連の本
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投稿者プロフィール
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。