思わず手に取って引き込まれた一冊!『夫が倒れた!献身プレイが始まった』野田敦子

たまたま、手に取った一冊にこそ、意外に素晴らしい出会いだったりするものです。

野田敦子さんの『夫が倒れた! 献身プレイが始まった』は、読み始めたら、最後まで一気に読んでしまいました。

介護問題の本音を経験から語ってくれるのは、私のようなミドル世代には、現実感を持って読める一冊でした。

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自分が倒れたら家族の介護という負担の重さは何か

数年前までは、必死になって育児・教育本や健康本を漁って読んでいましたが、最近、自分と親の年齢を考えて、介護問題を無視できなくなってきました。

少なくとも、今、自分が倒れたら、誰にどのような迷惑がかかるのかを考えてみることは、予想したくない未来ですが、心の準備はしておかないと大変なことになるのはイメージが湧いています。

家族にとって介護とはどんなものなのか。

しかも、自分が意思を全く伝えられないような状態になる日のことを想像しておくって、重苦しい話ですが大切なことです。

ある日、自分が自分でなくなる瞬間に向けて準備なんてできていない

野田敦子さんは、『夫が倒れた! 献身プレイが始まった』の中で、元気だった夫(59歳)が突然、自宅で倒れて、遷延性意識障害(植物状態)になってしまう話からスタートしています。

まずは、何をどうすればいいかわからない、パニック状態。

周りの声なんて気にしていられず、次から次へと動き、判断しなければいけない様子。

元のように戻れるのか、戻れないのか、全く知識もなければ何もわからないまま、日々が進んでいく感覚こそが、当事者であった混乱を伺えます。

生まれてきた以上、早かれ遅かれ、この世を去ってしまうのは避けられません。(不老不死が永遠の夢という人がいるのもうなづけます)

ただ、徐々に老いていったり、痛みを訴えながら過ごすとのは違い、自らが意思を伝えられない状況に陥ると、完全に家族や第三者に委ねるしかありません。

人生の中であり得るシナリオなのに、準備なんかできないのが、介護が必要な植物人間状態なのだと思います。(認知症などの介護とは状況が異なります)

遺言書を作るように、整理整頓して日々を生きていないから

終活と呼ばれる、自分の人生の終わり方を踏まえて、遺言書などの準備を進めようとする活動は、徐々に浸透し始めていますが、まだまだ、少数派です。

なぜならば、それほどの遺産なんて持ってないし、今のことで精一杯な日々を送っていらっしゃるのが一般人です。

ましてや、自分の終わりを踏まえて準備をするというのは、気持ちが明るくなるものではないので、気乗りがしないのも事実。

夫が倒れた! 献身プレイが始まった』を読んでみればわかりますが、身の回りで聞いたことがあるような話でもあり、当事者にならない保証なんて、どこにもないのです。

だからこそ、日々、自分自身の人生について、整理整頓をしておくことは、部屋を片付ける以上に、重要なことなのかもしれません。

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私の父は秘密もないけど、メッセージも残せないままだった

私の父は、60歳で肺がんで亡くなりました。

よくある話に思われるかもしれませんが、健康診断のレントゲン結果で異常が見つかり、斉一検査を受けて、入院、転院で2ヶ月弱の出来事でした。

人生で初めての入院をする父は、勝手がわからず困っていましたが、ただ、仕事の復帰時期だけは決めようとしていました。

当時は、今ほど、がん宣告を本人にするべきかどうか、微妙な時期だったので、家族としては本人には伝えない方向で治療が始まりました。

軽い気持ちで入院をした父ですから、身辺整理などほとんどしないまま、入院期間が40日ほどで、この世を去っていきました。

大層な秘密も資産もないので、トラブルはないものの、意識を失い言葉を発生ない残り10日間の日々を思い出すと、本当は、もっと聞いておきたかった話もあり、伝えたかったであろうメッセージもあります。

唯一、言葉として残っているのは

「母さんを頼むな」

という言葉と、その時の強く握られた手の感触だけでした。

あのまま、数ヶ月以上、延命していたら、家族はどうなっていたのか。

少なくとも意思が伝わらず、衰弱するだけの父を家族として見ていたら、耐えられたのかどうか、と思うと自信はありません。(母は看病後半に心身疲労で倒れてましたから)

あの日々が長期の介護というものであったら、自分がどうやって過ごせたのかと想像すると、厳しいものになったであろうと考えてしまいます。

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自分やパートナーが倒れてしまうかもしれない日を頭の片隅に置いておく

年齢に関係なく、自分やパートナーが倒れてしまうかもしれない日(事故も含む)を頭の片隅に置いておくことは重要なのがわかりました。

平和で幸せな日常であればあるほど、想像もできない世界ですが、突然、訪れた瞬間にパニックになります。

どれほど親しい友人であれ、親戚であれ、責任を持ってフォローをしてくれるわけではありません。

入院などをすれば医療従事者、介護施設に入れば、介護職の方々の力を借りることはできますが、究極的には、近しいパートナーへの負担は重くなるのは必然です。

お金を残せば済む話ではなく、相手の人生の後半を大幅に奪いつつ、精神的にも肉体的にも負担をかけるのは避けられません。

この本の最後に、旦那様達の介護に訪れる妻たちの逞しさと切り替えを見せる場面がありますが、ああでもしないとやってられないという現実を思い知りました。

毎日、将来の不安を抱えて生きていくのは、耐えられないでしょうが、頭の片隅に、予想しておくシナリオの1つに、パートナーの介護問題は残しておき、身辺整理を少しでも行っておく必要は感じました。

今が、幸せで何の不満も不安もない方にこそ、一度、読んでおいて欲しい一冊です。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。