ファンタジーや派手なアクション、一流の俳優陣などで、宣伝広告もバンバン出せる映画は人気が出やすいです。(わかりやすいエンターテイメントなので)
逆にいえば、良い作品であっても、テーマが地味であったり、暗い要素があると、どうしてもヒット作にはなりづらい。
今回、映画「罪の声」も公開時は、まったく知りませんでした。
日本アカデミー賞の各賞にノミネートされるような作品ですので、アマオンプライムビデオで500円を払って見てみました。
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主演の小栗旬と共演の星野源ならばもっと話題になっていたはずなのに
よく考えてみれば、人気俳優のW主演とも言える作品なので、もっと、話題になっても良さそうな気がします。
第44回日本アカデミー賞では各部門で表彰されているので、評価はされているのだろうけど、どうもインパクトがないのは、映画館に足を運びにくい状況で公開された作品という運命にあるのかもしれません。
小栗旬も彼らしい演技を見せていたし、星野源も良かったです。宇崎竜童を含めた脇役ベテラン陣も秀逸でした。
原作者の事件への掘り下げた思いが伝わるのは、子どもが事件に巻き込まれているから
予告動画を見て、絶対に見たい作品になりました(アマゾンプライムビデオで、500円を払って視聴しました)。
原作者の塩田武士(しおた たけし)さんが、大学生時代に、グリコ・森永事件を調べて、事件に使われた「子どもの声」に着目して、時間をかけて作られた作品だけに、ベースがしっかりしているのが、この映画の根本です。
大事件に子どもが巻き込まれるとすると、被害者になるケースが大半ですが、今回の場合、犯人側の指示を読むという役割を果たしています。
映画でも着目されていた通り、子ども自身は、周りの大人から渡されたメモを読むだけで、その意図を理解しているわけではなく、後から知った事実に驚愕を覚えて、人生が流転していきます。
犯人が誰なのか、という謎解きストーリーも興味を持ちますが、時間の経過とともに、当時の人間が大人になり、高齢者になり、という変遷に深さが存在している作品です。
グリコ・森永事件とは(Wikipediaより引用)
作品のモチーフになった、グリコ・森永事件を記憶しているのは1980年代に10代以上だった方に限られている可能性があるので、Wikipediaより概要を引用します。
グリコ・森永事件(グリコ・もりながじけん)とは、1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に、日本の阪神間(大阪府・兵庫県)を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件。
警察庁広域重要指定114号事件。犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、かい人21面相事件などとも呼ばれる。
2000年(平成12年)2月13日に愛知青酸入り菓子ばら撒き事件の殺人未遂罪が時効を迎え、すべての事件の公訴時効が成立してこの事件は完全犯罪となり、警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。
結局、未解決事件のまま、事項を迎えてしまい、未だ、謎は残ったままの事件です。
お菓子に毒を混ぜるというセンセーショナルさは消えない
歴史を見ても、食べ物に毒を混ぜるという行為は、いくらでもありますが、子どもが食べるお菓子に毒を混ぜて、誰が被害を受けるかわからないという悪どさを感じる、センセーショナルさは消えません。
もちろん、店舗に「食べたら死ぬで」などのメッセージを貼り付けたりすることで、子どもたちはお菓子を買えなくなりました。
私も、当時、小学生でしたから、毒を混ぜられたお菓子を食べたら、死んでしまうかもしれないという恐怖がありました。(関西エリア中心の事件だったので、少しだけ距離感はありましたが)
無差別テロや殺人のような非道な行為は許せませんが、毒入りお菓子を世間にばら撒こうとしている行為も許せるものではありません。
また、結局のところ、犯人たちが何をしたかったのかが、不明なまま、という点が印象に残っています。
作品の中の原点を、60年代の学生紛争に持ち込むのは安易
最近の社会事件をモチーフにした作品の場合、学生紛争時に、若者が味わった興奮と挫折をベースにするものが多い。
今回も、同様な要素を関係者に交えていました。
あの時代へのノスタルジーがあるのはわかりますし、日本社会の変遷として大事な時期だったのはわかりますが、果たして、その後の人生で事件につながる原点のような扱いをするのは、ワンパターンに感じます。
事件当時に、関係者当人たちの思いは、当時の社会や世相などへの憤りなどにあったのであって、全てを過去に軸を合わせてしまうと、現代を生きる若者からは理解を得られない作品になってしまうと感じます。
今回の作品が、当時(1980年代)に子どもや大人だった、中高年以上ならば理解できるけれども、30代以下には、歴史モノであり、インパクトに欠けると感じたり、興味を持ってもらえなかったとしたら、もったいないのではないでしょうか。
未解決事件だから解釈は自由だけれども
原作のモチーフになった、グリコ・森永事件は、未解決事件だからこそ、解釈は自由にできます。
今の科学捜査があれば、監視カメラも含めて、犯人の痕跡を追えているかもしれません。
事件の背景を追うよりも、映画(原作も)の中で関わった、子どもたちの人生の変遷が重要なポイントと訴えたいのではないでしょうか。
虐待やいじめなどの社会問題は、オンタイムの問題でありながらも、その後の人生を左右するかもしれないというメッセージは重く受け止めました。
彼らは、自らの意思で事件に関わったのではなく、周りの大人たちに利用されて、巻き込まれた当事者という設定でした。
ラストに向けて、少しだけ、スッキリしたのは、この変遷で苦しんだ彼らに焦点をあてたからだと感じました。
事実を受け止めて、生きていかなければならない、という観点は、世の中の事件・事故のその後、ということを考えさせられます。
あくまで、モチーフにした小説なので、事実と誤解しては行けませんが。
歴史的事件を振り返るのは後世を生きる人間の使命の1つ
歴史的事件を振り返ろうとすると、教科書に載っている内容にばかり目が行きます。
ノンフィクションであれ、フィクションであれ、当時の関係者に対して、丁寧に掘り下げて作られた作品たちは、私たちをタイムワープさせてくれます。
自分が当事者だったら、どんな判断や行動をしたのだろうか。
その思いを忘れずに、映画「罪の声」を見てみると、感慨深いものがありますよ。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。