『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(清武英利・著)を切ない気持ちで読みながら、企業の寿命と役割、価値について考えてみる

清武英利氏といえば、読売新聞の社会部記者として活躍後、読売巨人軍球団代表を務めた人物であり、突如、解任騒動の末、ジャーナリストへ転向を遂げた人物です。

彼の書き上げるノンフィクションの質の高さは耳にしていたので、『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』を読んでみることにしました。

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リストラしなければ生き残れない状態まで追い込まれた理由は何だろう

『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』には、当事者が実名(一部のみ仮名)で当時のことを赤裸々に語るような切り口で書かれています。

SONYで長年勤め上げたエンジニアや企画、営業部門の人間をリストラ部門に異動させるか、早期退職制度を積極的に使って、社員数のスリム化に向かった背景はなんだったのだろうかと探りつつも、現場の部門で頑張ってきた一人一人の当時とその後の道まで丁寧に掘り下げられています。

ここまでSONYが追い込まれた本当の理由は何だったのかを考えながら読み進めました。

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SONYが自分らしさを見失い、イノベーティブな製品を生み出す社員を疎かにした

国内だけでなく、海外にも自社製品を展開していたSONYは、日系の大手電機・精密機器メーカーでありながらも、海外にも受け入れらる素晴らしい、ブランド力を持っていました。

それだけに、バブル期までは、独自の商品を生み出して、世の中を変えていくような猛烈なインパクトをたくさん持っていたのです。

Appleの、故・スティーブ・ジョブスもSONYに多くのことを学んだと言われています。

一方で、組織の肥大化は、世の中にインパクトを出す製品作りの力を衰えさせてしまい、売上・利益の低迷につながっていきました。

やはり、iphoneやipodなどのApple製品は、先んじてSONYが出せる力があったはずなのに、完全に遅れを取ったのでしょう。

SONYの社員は、常識を飛び越えたものを作れる奇才・天才たちが自由闊達に働くイメージしかありません。

尖った社員(主にエンジニア)たちの力を軽んじるようになったのは、残念でなりません。

創業者世代から切り替わるときに企業の成長も進化も過渡期に入る

SONYといえば、井深大と盛田昭夫のコンビで大きく成長してきたのは間違いありません。

その後、後継経営者は偉大な2人の後を追いつつ、時代にフィットさせようと取り組みましたが、方針や目線が本来とは異なる経営に向かってしまい、結果として、安直な社員数減らしにつながるリストラへ舵を切ったのだと思います。

2000年以降、毎年のように継続的に社員を減らしていきます。

もちろん、優秀な社員が多くても、実態よりも規模が大きくなり苦しい状況が生まれれば、スリム化を図るのは致し方ないのは当然の結果です。

企業が過渡期に入り、何をメインドメインとして、もしくは、企業のDNAを残しながら未来に向かっていくのかを真剣に考えて進めていけるかどうかは、とても難しいのでしょう。

組織も大きくなると、現場と経営層に大きな溝が生まれてしまい、顧客志向を失ってしまうと、崩壊に向かう可能性は無視できません。

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企業は30年寿命説を乗り越えられる企業かどうか

一般的に、企業の寿命は30年という説があります。

景気循環や、ビジネスモデルの変化に伴い、30年まで持てば御の字というのが企業という存在だという説は長年言われています。

もちろん、時代の変化に伴い、このスピードも短くなり、合併・解散、倒産が増えたり、事業ドメインが大きく変わる企業も多いのは事実です。

どの企業も立ち上げた期は、小規模なベンチャー企業やスタートアップ企業と変わりません。

この時期に確実に成長を遂げた企業は生き残っていくのですが、そこには経営者・社員の努力があり、協力してくれるパートナーや、顧客が存在したのは言うまでもありません。

では、100年を超えるような老舗企業になる場合と、定説通りの寿命で終えてしまう企業にはどこに差があるのでしょうか?

時代に合わせて、未来を見て、世の中に貢献できて、成長ができる企業以外は生き残れません。

まして、経営者が、誰を見て、何を大事にするのかが、時代や環境に合って、支持を得られなければ、永続的に存続することは不可能です。

SONYは生き残った!果たして革新的な未来を提供できるのか!

2015年に出版された『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』から、10年近くの時間を経ても、SONYは生き残っています。

では、この本で取り上げられた時期の大きなダメージを払拭しきれているのか、と問われると疑問が残ります。

テレビを持たない個人も増えて、スマートフォンも国産メーカーに拘らず、デジカメもあえて必要としない人たちにとって、SONYは身近な企業とはいえなくなっているのかもしれません。

もちろん、医療分野にチャレンジして、今までの技術を生かしているという話は耳にしますが、病院関係者でもない限り、その姿はわからないでしょう。

優秀で自由な社員がたくさんいるはずのSONYが、自らのアイデンティティに立ち返って、ものづくりメーカーとして生き残るのか、コンテンツ提供者側のサービスを広めていくのか。

いずれにしても、SONYが再び社員を切り捨てるような動きを取らずに、成長と成功に向かうことを願っています。

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安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。