吉田修一作『ミス・サンシャイン』に流れる時の流れの長さと生きる意味

作家が自分の作品に、自らのアイデンティティを盛り込むことは普通の行為。

映画『国宝』の原作者として、脚光を浴びた吉田修一さんの別の側面を見れる、『ミス・サンシャイン』は、彼の出身地・長崎が大事に織り込まれている点に気づくと深みが変わります。

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吉田修一さんの原点は、長崎にあるのか

『パレード』『悪人』『怒り』などの作品を映画や小説として読んできた私が吉田修一さんの世界に、ものすごく暗いものが潜んでいると感じていました。

ドタバタなストーリー、たくさんの伏線を回収するのが当たり前の世の中のエンタメの中で、むしろ、暗いものをそのまま終えてしまうことに躊躇しない、人のダークな面を描くスタイルに、他の作家と違い、もやもやした気持ちが残ってしまうので、正直、好き嫌いが分かれるタイプなのだと思っていました。

映画「国宝」の大ヒットで更なる注目が集まる中で、彼のプロフィールを見て、長崎出身であることを軽くチェックしましたが、『ミス・サンシャイン』を読んだら、彼の原点の場所が垣間見ることができました。

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伝説の映画女優と大学院生の心に触れる物語

ミス・サンシャイン』のあらすじをAmazonから引用します。

心に傷を負った大学院生・岡田一心は伝説の映画女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波乱万丈な映画人生、原爆が奪った運命と大切な人たち――その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。清冽な感動に包まれる島清恋愛文学賞受賞の傑作長篇。

正直、伝説の映画女優は誰を想像すればいいのか、戸惑いながら読み進めました。

ハリウッドにまで進出しているような日本人女優、アカデミー賞に当時の日本人としてノミネートされるなど、思い描くことが難しいですが、小説なので、想像力を働かせるしかありません。

また、和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝い大学院生の岡田一心。

明らかに世界観、年代も異なる二人がどのように交わっていくのか。

お互いが抱える心の傷、忘れられない人のことを胸に秘めて生きているという共通点。

そのバックボーンが長崎にあり、被爆地であったこと。

時の流れが戦後から現代に流れるのも違和感がなくて、読み進めながら、この世界観に浸っていけます。

短い命は不幸ではなく、幸せに生きた思いを残し、伝える

若くして亡くなった人に対して、不遇の短い命を終えたと誰もが考えてしまうもの。

でも、『ミス・サンシャイン』では、その当事者は不幸ではなく、幸せだったと言い残している点が共通しています。

人生は長さの問題ではなく、どう満足して生きたのかが大事なのだと、残る人に伝える思いには無念ではなく、熱い気持ちを受け渡すような感覚。

人の心に残る大事なエピソードは、多くの人に語られることはなく秘めているもの。

そこに触れた作品だからこそ、読後に色々と考えさせるという価値を生んでいると気付かされます。

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若くして亡くなった彼女のことを思い出した

私は、『ミス・サンシャイン』を読んで、ある一人の女性を思い出しました。

偶然、出会ったのは同じアルバイトの1つ学年下の後輩。

彼女はこのアルバイトに至るまで、どうも心に傷を負ったらしいことは、断片的に話をしてくれました。

彼女の明るい雰囲気は周りを笑顔にさせて、アルバイト先の先輩と付き合います。

その後、無事に就職氷河期にもかかわらず、大企業就職をしたまでは間違いありません。

今から20年以上前、そんな彼女と駅の切符売り場(券売機)のあたりで、ばったり遭遇しました。

「先輩!お久ぶりです。元気そうですね。今度、ご飯でも食べに行きましょうよ!」

彼女が、私に話した最後の言葉です。

数ヶ月後、彼女が亡くなったという話を人づてに聞きました。

病気には思えない雰囲気ですから、事故なのか、もしくは何らかの事情があったのか、詳しい人に話を聞けていないので、わかりません。

あの時に、もう少し話せばよかった。

もしくは、食事に行くスケジュールを決めればよかった。

彼女の明るく振る舞う表情の裏に、何かを抱えていることは薄々気がついていたのに、私は、そこに触れようとしなかったし、触れちゃいけない気がしたので、放置してしまいました。

せめて、彼女という存在がいたということだけは、たまに思い出せたら、と思うばかりです。

日常生活の中では忘れているし、当時の仲間と会わないと出てこない記憶になっているし、年々、薄まっている感じが否めませんが。

誰かの代わりには生きられなくても、思いは引き継げると思いたい

ミス・サンシャイン』を読み終えて、誰かの代わりに自分が生きることはできないと思っても、気持ちや思いは胸の中にしまいこみ、引き継げるのかもしれません。

引き継いだ自分も、この世を去ってしまったら、消えてしまうのでしょうけども。

誰もが口にできない、胸に秘めた思いをえぐる作品として、印象に強く残りました。

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安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。