ドリアン助川さんの『あん』に込めた、無理解な差別と向き合う世の中になって欲しいという想い

Peatixのさまざまなイベント(現在は、大半がオンライン)を見ていて、ゲストの方の名前で参加したい、と反射的にボタンを押してしまうことがあります。

今回は、ドリアン助川さんのオンライン講演会が聞けると知って、自分の予定を確認せずに、ポチッとしました。

小説『あん (ポプラ文庫)』や映画『あん』のことなど全く知らなかったのですが、イベントに参加した後、小説も映画もどちらも堪能させていただきました。

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ドリアン助川さんといえば、ニッポン放送の土曜夜のパーソナリティ!

私が、ドリアン助川さんを知っている理由は、ニッポン放送のドリアン助川の正義のラジオ!ジャンベルジャン!(1995年10月14日から2000年3月18日に放送されていた相談番組)の不真面目リスナーだったからです。

それまで、彼の参加していたロックバンド、叫ぶ詩人の会も知らなければ、ドリアン助川さん自身も知りませんでした。

若者リスナーからの相談に真摯に答えていくパーソナリティとして、真面目に大人が向き合っている姿が強烈に印象に残っています。

『あん』の伝えたい世界に、ドリアン助川さんらしいメッセージがあった

今回、偶然、Peatixでドリアン助川さんのオンライン講演会があると知り、久々に、彼の声や話を聞いてみよう、ぐらいの軽い気持ちで、応募しました。

ドリアン助川さんとは?

早稲田大学時代に劇団を主宰し、雑誌ライター、放送作家などを経て、「叫ぶ詩人の会」(メンバーの薬物所持による逮捕で所属レコード会社に契約解除)を経て、ラジオパーソナリティ、家、詩人、歌手、明治学院大学国際学部教授、日本ペンクラブ常務理事。日本ペンクラブ「子どもの本」委員長。日本文藝家協会会員。

あん 』は、2014年に出版された小説で、第25回読書感想画中央コンクールで指定図書(中学校・高等学校の部)に選定され、2015年に河瀬直美監督が映画化しています。

そもそも、『あん 』というタイトルだけでは、人の名前なのか、何が書いてる小説なのか、全く想像ができません。

『あん』のあらすじ(Wikipediaより引用)

季節は春。桜の咲き乱れる公園に面したどら焼き屋、『どら春』で、辛い過去を背負う千太郎は雇われ店長を続け、日々どら焼きを焼いていた。ある日この店を徳江という手の不自由な老婆が訪れ、バイトに雇ってくれと千太郎に懇願する。彼女をいい加減にあしらい帰らせた千太郎だったが、手渡された手作りのあんを舐めた彼はその味の佳さに驚く。徳江は50年あんを愛情をこめて煮込み続けた女だったのだ。店の常連である中学生ワカナの薦めもあり、千太郎は徳江を雇うことにした。徳江のあんを使ったどら焼きのうまさは評判になり、やがて大勢の客が店に詰めかけるようになる。だが、店のオーナーは徳江がかつてハンセン病であったとの噂を聞きつけ、千太郎に解雇しろと詰め寄る。そしてその噂が広まったためか客足はピタリと途絶え、それを察した徳江は店を辞めた。素材を愛した尊敬すべき料理人である徳江を追い込んだ自分に憤り、酒に溺れる千太郎。ワカナは彼を誘い、ハンセン病感染者を隔離する施設に向かう。そこにいた徳江は、淡々と自分も自由に生きたかった、との思いを語るのだった。

タイトルの『あん』とは、どら焼きの中身の「あん」だったと知ると、ほっこりします。

一方で、なぜ、この小説を、ドリアン助川さんが書いたのか、映画化された方については、今回のイベントで語ってくれました。

彼自身が、ハンセン病の存在を知って、その事実をどうやったら伝えられるだろうと考えて、この小説を全力で書いたのがわかります。

登場人物たちが、どこか弱さを持つ人間たちが寄り添い、しかも、ハンセン病の徳江のあんへのこだわり、彼女の人生が知らされると胸が締め付けられる思いがします。

不治の病のような伝染病とされ隔離されたハンセン病患者たち

日本では、かつて「癩病(らい病)」と呼ばれていたハンセン病。

感染症として、疎まれて、家族から隔離されて、ハンセン病患者たちは苦しい生活を送っていた事実。

名前を変えて、集団で集められて、普通の生活や幸せなどが得られない人生。

正直、『あん』の中で、徳江さんや一緒に暮らしていた仲間の語る話を聞くまでは、存在も状況も知りませんでした。

今では、治療を経れば完全に治癒できる疾患と理解されている、ハンセン病ですが、以前は不治の病とされていた時期が長くありました。

また、多くの誤解があり、遺伝病、強烈な感染力のある病気、などとされていたため、社会的な隔離と差別の対象となっていたのです。

徳江さんたちが、家族と縁を切るような生活を強いられて、普通の人生を歩めなかったのは、病気と周りの不理解による差別だったのは間違いありません。

よく知らないままに、人を集団で差別してしまう姿

映画 『あん』で、樹木希林さん(最後の主演作)が演じる徳江の姿。

手先が不自由であっても、一生懸命作り上げた「あん」をどら焼きに挟んで、多くの人に食べてもらえる喜びの姿。

一方で、周りが彼女の手先の不自由さと、ハンセン病施設で生活をしている事実を知り、排除したくなる心理。

人間性でもなく、提供している「あん」の味でもなく、ただ、よく知らない病と症状の存在に怯えて、自分たちの世界・視界から追いやっていく展開。

小説や映画だからと割り切れないのは、事実を知らないまま、特定の人を集団で差別してしまう問題があります。

らい病・ハンセン病に染み付いたイメージは、現在の治癒状況を知らなければ、自らが近づいて感染をしたくない存在なのです。

徳江さんという人間や人生などを気にせずに、自分を守るために相手を遠ざけてしまう。

差別をなくそう!と色々なスローガンを打ち立てても、変わらない現実が残っています。

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世界でも認められた映画『あん』に込めたドリアン助川さんの思い

原作を書く時点で出版社からも、伝染病患者をテーマにするのは避けるべきだと言われた、ドリアン助川さん。

売れない、批判を受けるなど、出版社の考える理屈はわかるものの、真実を小説にして伝えたい気持ちは変わらず、そのメッセージは、映画化されました。

話題作に比べれば興行収入は微々たるものだったかもしれませんが、確実に世界にも映画は公開されて、評価を受けています。

ドリアン助川さんは、弱きものに対して、丁寧に向き合い、伝える役割を厭わない存在です。

彼が、今後も小説の世界で、私たちが目を向けていない世界を教えてくれることに期待しています。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。