キャリアデザイン学部教授が書いた『キャリア教育のウソ』にはヒントがいっぱい

一冊の興味深い本を読んでいると、参考や引用文献が気になって、メモをして次に読みたい本としてリスト化することがあります。

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)』(児美川考一郎)も、リスト化された中の1冊です。

21世紀に入って、やたらと耳にするようになったキャリア教育・キャリアデザインの話に興味を持ったものの、どこか違和感を感じていた私には納得の一冊でした。

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キャリア教育・キャリアデザイン論に違和感が消えない

私自身、キャリア教育・キャリアデザイン論に、とても興味がある分野でした。

ところが、ある時点から、この分野が現実とのギャップが激しいと感じるようになり、距離感を持つようになりました。

その疑問やモヤモヤ感に『キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)』は答えのヒントを与えてくれたので満足できました。

正社員として就社することを促しても、キャリアは変動するものだから意味はない

私の卒業した大学で「キャリアデザイン学部」なるものができたのは、21世紀初頭だったと記憶しています。

学生時代から自分のキャリアについて考えておくというのは悪いことではない、と当初は考えていました。

とあるご縁で、その学部でゲスト登壇の予備的な打診を受けたのも20代の頃でした。

興味はあったものの、アカデミックな要素を伝えられないキャリア形成という名の職場探しの手伝いを仕事にしていた私には、ハードルが高いので見送りました。(もったいない話)

この数年、疑問に感じることが増えていました。

キャリア教育を学んだから、自分の軸がしっかりしている若者が増えているわけではない事実を突きつけられました。

中学校での職場体験などの授業を経ているし、『13歳のハローワーク』のような本が出ているのだから、もう少し、自分の仕事やキャリアについて考えている若者が世の中に溢れて来るのでは、という期待感は裏切られています。

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キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)』を書いたのがキャリアデザイン学部で教育学を専門に扱っている、児美川さんだったので驚かされました。

自己否定的なタイトルじゃないか!

批判ではなく、現実に向き合い、キャリア教育に切り込んでいる一冊です。

学校は、先生と教育関係者しかいないので、キャリア教育は、専門の外部機関に委託するような流れが多く、当事者でありながら他人事。

大事なのは、卒業生の就職内定率と有名企業への就職人数という本音が見え隠れしている。

やりたいこと探しを強制し、興味がさほどない職場体験をさせて、キャリアプランを考えさせる。

確かに、未熟な子どもたちに、取り組ませるには課題が多いのも納得できます。

つまり、子どもの頃の夢や希望のまま、人生を送っている大人がどの程度いるのか考えればわかるようなものです。

親の仕事の影響力が強く、跡を継ぐような意思で育ってこない限り、まともなキャリア教育はできません。(政治家や芸能人の二世などは批判されますが、ある意味、身近に見ていた人物のキャリアを踏襲しているのでしょう)

そもそも、人生やキャリアなんて、予測不能なもので、偶然な出来事によって変化していくことは、歴史上の偉人伝を読んでもわかる話なのですから。

あわせて読みたいブログ記事

変化が激しい時代に安定した環境(職場・企業)はないから

変化が激しい時代、スピード感のある時代に、安定しした環境(職場・企業)で働こうと促すようなキャリア教育には限界があります。

新卒で就職した会社に定年まで、滅私奉公で働き続けるような、高度経済成長期の日本のサラリーマンが特殊な存在だったわけですから。

勤めていた会社が倒産したり、リストラされたり、全然違う分野の仕事に巡り合ったり、という仕事の変化もあれば、テクノロジーによってアップデートされて今の仕事を失うかもしれません。

さらに、人生という観点で考えれば、家族の問題、健康のトラブル、色々な要素で、キャリアは影響を受けるのは避けられません。

キャリアが仕事という意味合いで理解するから問題なのであって、人生の道というスタイルで捉えれば、さまざまな変化に対応して変わっていくのは必然。

学生時代に学ぶキャリア教育・キャリアデザインは、羅針盤にはなるけども、人生の地図ではないのです。

途中で思わぬ宝物を見つけることもあれば、落とし穴にはまることもあるのです。

キャリア教育は、どんなに人生は変化に富むものなのか、その変化に対応して、自らを変えていくことを伝えていく学問でなければ、「就職力アップのための学問」になってしまっているのが現実なようです。

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8回転職している友人の話

私の学生時代の友人の話です。

彼は、最近、8回目の転職をしました。

人生でそこまで就業先を変える必要があるのか、と尋ねられると疑問ですが、事実です。

まともな就活をせず、知り合いのご縁で、特殊な専門的業界に入り込み、キャリアをスタートさせた彼。

その後、自分自身や企業の変化に伴い、転職を繰り返してきました。

仕事内容も、勤務地も、色々なものを変えながら。

先日、8回目の転職をした時

「また、転職したけど、ここで腰が落ち着くかはわからない」

と言い切っていました。

この回数を繰り返すと、履歴書も職務経歴書も、社会保険の手続きも慣れたもので、スムーズです。

もちろん、非公開な求人、知り合いの紹介や頼まれた仕事についたこともあります。

彼のキャリアには一貫性なんてありません。

でも、彼自身は一貫しています。

自分が求められて、活躍できる場所で働ければいい。

逆を言えば、求められないで活躍できないと思ったら、次に移るのは当たり前という価値観です。

昔は、職を転々と変える人間を、落ち着かない奴(ダメ人間)と見捨てていた雰囲気がありました。

もちろん、短期間で退職したり、トラブルがなかったわけではないのですが、柔軟に変化し続けている、対応力だけは、並の人間のレベルではありません。

変化することに違和感がない、恐れがないことが彼の最大の武器だと、私は見ています。

キャリアは予測不能だけど、変化への対応力を身につけろ!

キャリア教育は、自己分析をして、自分のやりたいことに向けて突き進めば、描いた未来を手に入れられると安易に教えているわけではありません。

ただ、どうしても、就職して働くことだけをキャリアと定義づけすると、本来の意図とは異なってきます。

世の中で「キャリアアップ」だけが叫ばれた時代は、待遇(給与や肩書き)がアップしていくことだけが幸せな道と伝えていたものです。

ところが、今は、キャリアは自由に変化する、予測不能なものであるという認識は定着しているのです。(表向きではなく現実問題としての話)

何が起きるかわからな、予測不能な時代を生きているのだからこそ、キャリア(人生全般を含む意味合い)は、柔軟に変化へ対応できるものとして作り上げていくものなのです。

キャリア=仕事ではない、という世界的な常識の価値観が日本でも当たり前になることを願っています。

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投稿者プロフィール

安斎 輝夫
【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。