国会議員や大臣として、都知事としても活躍し、世間で有名になったのは作家としてのスタートだった、石原慎太郎という人物について、自己主張の強い男という印象しか湧かないのだとしたら間違いなのでしょう。
65歳になる前から書き綴られた自伝『「私」という男の生涯』(幻冬舎)が、石原自身と妻・典子の没後を条件で刊行されたので、彼をよく知るために一読してみました。
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89年の生涯を自らの言葉で伝えぬく
自分史をまとめておいたとしても、誰も読まないかもしれない。
第三者にとって、役に立つ話もなければ、本人の主観を伝えられても、感情移入も理解もできない。
ただ、石原慎太郎は、時間をかけて自分の人生を振り返り、残せる思いや活動を自らの言葉で伝えぬく、という姿勢で、この一冊を書き上げたのだと思います。
一歩間違えば自慢の自分史だが、正直に書いている
第三者に自分の人生を伝記として書かれることを望まずに、自らの言葉で綴った石原慎太郎氏のスタンス。
作家としても素晴らしかったし、遊びも豪快だったことが伺えて、昭和をメインで生き抜いた男らしい雰囲気が漂います。
今の時代ならば、倫理的にバッシングをされているような事柄でも、なんとか収められてしまうというのは、影響力があった証拠だと思います。
政治家としての自慢話は少なく、私人としての人生を赤裸々に語りかける姿は、第三者に勝手に語ってもらいたくないという、強い意志を感じます。
なぜ、自分と妻の死後に出版してもらいたかったのか
本の中盤に出てくる女性遍歴の話は、実に、生々しい。
「英雄色を好む」という言葉がぴったりハマるのも、石原慎太郎という人物を語る上で、表に出てこない話だけに、強烈な印象を与えます。
この内容ならば、妻が生きているタイミングでは世間に発表できなかったのは間違いありません。
幻冬社の社長、見城徹氏との信頼関係があって、彼を理解したがゆえに、石原夫妻の死後に出版となったのは納得です。
明らかに、自分と関わった人を批判することなく、まとめているのは見事です。
雇われない生き方で一生を終えた男
石原慎太郎氏の主張、作品などに対して好き嫌いはあるにせよ、彼が魅力的に映った理由は、人生のほとんどを雇われない生き方で一生を終えている点だと思います。
作家デビューが偶然の産物だとしても、彼は、世の中に認められて、面白いプロジェクトや人物と関わることが増えていったことがわかります。
まさか、日生劇場(日比谷)を作るために彼が動いたことなど知らない人も多いことでしょう。(私も知りませんでした)
作家から政治家に転身しても、自民党に属した期間が長くても、決して派閥のトップになろういう野心よりも、自分の考えていることを実践することにだけ力を注いでいます。
都知事になってからも、毎日、当庁しないという批判はあったものの、必要でなければ、自分のやりたいことに時間を割くという自由人。
どれもこれも、自分で選択をして、認められながら、雇われるという立ち位置を取っていないのです。
ここに、彼が世間の人から注目を受けた理由の一端があると感じます。
戦後の日本には不可欠で、平成まで突っ走った傑物
戦後の日本において、『太陽の季節』で芥川賞でデビューを果たし、映画化の中で、弟・石原裕次郎を俳優として世に出して社会にインパクトを与えた存在。
作家としての立ち位置で終わらず、政治家に転身して、自分の思いや主張を力技で成し遂げ、プライベートのトラブルもなんとか処理をしてきた男。
世間の常識とは違う価値観で生きてきただけに、傑物だったことは間違いありません。
主張や考え方、行動、全てに賛辞を送るつもりは全くありませんが、今の時代では生まれにくいスケール感の大きな人物だったことは忘れないでおきたいものです。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
Expand your life with energy and support. というミッションを定めて、人生を一緒に拡張していける仲間を増やすために活動を展開。月1回のリアルなイベント「サードプレイス・ラボ」の運営するリーダー(主宰者)。また、6人で執筆する、週刊「仲間と一緒にワクワクしながら、大人が本当の夢を叶える!サードプレイス・メルマガ」(まぐまぐ)の編集長。Facebookページおよびグループの「サードプレイス・ラボ」も運営中。