68歳の幻冬社社長の見城徹氏が語る読書、編集者と著者は深い
何度か名前を耳にしたことはあるものの、私は、見城徹氏という人物について何も知らないまま生きてきました。知らなくても困らないから、関係ないとも言えます。
箕輪厚介氏という幻冬社編集者という自社の部下からの熱烈なラブコールに応える形で出版を決めた点も興味深い。
『読書という荒野 (NewsPicks Book)』に引き寄せられるように読みました。
読書とは「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じるか」だ
最初から、読書で自分の人生を切り開いてきた、見城徹さんらしさ満点ではじまる一冊でした。
自分ができない経験を吸収するという姿勢から、見城さんの本への熱い思いを感じる。
自己嫌悪を克服するために、自分の人生の逆境の時ほど、猛烈に本を読んできた男。
しかも、ビジネス書ではなく、文芸書に関わる道を突き進み、ヒット作を世に送り出してきた敏腕編集者だからこそ、語れる内容に溢れていました。
編集者の武器は「言葉」だけと言い切る
見城さんの生きてきた時代は、昭和で育ち、昭和が染み着き、平成に移ってきた流れだけに、ノスタルジーな要素も含まれています。
その根性丸出しでガツガツしそうな雰囲気は、今の若者には合わないキャラかもしれません。
子供から学生時代、そして、編集者の駆け出しにかけて書かれていることは、どれも普通とは思えない部分が見てとれます。
その結果、彼は、自分の拠り所を本に置きながら、全力で吸収を続けてきました。
一流の編集者だからこそもてる感覚は、世間一般とはズレているかもしれませんが、この尖っていなければ、極端にもなれないし、突き抜けることもできないのだと思います。
僕はいつも、「売れるコンテンツの条件は、オリジナリティーがあること、極端であること、明解であること、癒着があること」と言っている。
しかも、文芸作品の完成度を高めるという理想論ではなく、売れる本にこだわるのは、出版会社の中でもエッジを立てて走ってきた男の生き様を感じます。
多くの才能に触れながら、自分自身を磨くのがプロフェッショナルな編集者
五木寛之、石原慎太郎、中上健次、村上龍、林真理子、村上春樹、宮本輝など錚々たる作家との付き合いを通して、作品を世の中に生み出す役目を果たしてきた、見城徹さん。
この『読書という荒野 (NewsPicks Book)』で、きらめく才能と触れあいながら、自分自身も成長させてきた彼の生き方を語っています。
驚いたのは、尾崎豊と接点があったという事実。
本気で付き合い、ぶつかり合う生き方に憧れは抱くものの、普通の人にはできないのも納得。
才能があるからこそ、常識外れな人物でありながらも実績を残している著者たちの姿を語れるのは、編集者だからこそ知りえる情報なのでしょう。
見城徹の死生観と三島由紀夫の生き様
好きなこと中心で生きることを推奨する、最近の書籍とは明らかに一線を隠すのは、死生観を語り、三島由紀夫の自殺する場面まで掘り下げる点にあります。
年齢を重ねると死を意識さざるえません。人生は終わりの時に向かって、着々と進んでいるのは普遍だからです。
だから、せめて救われるために、死の瞬間に「自分の人生はまんざらではなかった」と思って目を閉じたい。とはいえ、まったく後悔せずに死ねることはあり得ない。おそらく死の間際に「あれをやりたかった」「これをやりたかった」と後悔すると思う。しかしその後悔を少しでも減らすために、早朝に起き、身体を鍛え上げ、休息なく働き続けているのだ。死ぬときはきと誰だって苦しいだろう。眠るように死ねればいいが、そんなことは稀なはずだ。痛いだろうし、怖いだろう。しかし、棒は最期の瞬間に自分で自分のこと人生に◯(マル)をあげられればそれでいい。
一方、時代の中で、自分の主張を純粋に極めた三島由紀夫の最期は、歴史の1ページなのに、詳細な事実は知らない人が多いもの。この部分に関しても、あえて、自分の著書に盛り込んだことに、見城徹さんという人物の姿を垣間見ることができます。
本を読む量で人生が変わると言い切れる、「読書命」な編集者
現在の編集者の中でも、圧倒的な存在感と実績をあげてきた見城徹さん。
彼は、ひたすら本を読んで自分の人生と向き合い、世間の人に伝える手伝いとして編集の仕事をやってきました。
単純な読書好きというよりは、「読書命」な編集者であり、彼自身が得ている知識や経験などをアウトプットしてくれたことに感謝したいと思います。
本を読む人が減っているのに、新たに出版さえる書籍の数は減りません。
一生を通して、どれだけの本が読めるのでしょうか。
読書から得られるのは、ノウハウなのか、感動なのか、知恵・知識なのか、人それぞれです。
偶然読んだ1冊の本も、著者、編集者がいて、世の中に伝えたいメッセージがあります。
(もちろん、多く売れて欲しいという願望は必ずありますが)
もし、手元に積読している一冊、気になっている一冊があれば、数ページでも良いのでめくってみませんか?
どんなに忙しくても、その時間は人生に影響を与えてくれるはずですから。
この1冊を通して、プロの編集人として生きてきた見城徹さんの凄さを感じ取れることができました。
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【サードプレイス】ブロガー 、安斎輝夫。長年サラリーマンとして家庭と職場だけの生活に疑問を持ち、2017年から「サードプレイス」を研究・実践し、人と人をつなぐコネクターな存在になろうと決める。
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